卓話時間
第1540例会
2012年05月07日 (月曜日)
- タイトル :
- クラブフォーラム(ロータリー財団委員会)
「心をつないで世界へ」米山奨学会の学友たち
- 卓話者 :
- 村上恒二委員長
ロータリー米山奨学事業について
米山奨学委員長 村上恒二
1.奉仕の人「米山梅吉」
米山記念奨学会の記念の称号を付した米山梅吉氏(1868-1946)は、幼少に父と死別し、母の手一つで育てられました。16歳の時、静岡県長泉張から上京し、働きながら勉学にはげみました。20歳で米国に渡り、ベルモント・アカデミー(カルホルニア州)、ウエスレアン大学(オハイオ州)、シラキュース大学(ニューヨーク州)で8年間苦学の留学生活を送りました。帰国後、文筆家を志して勝海舟に師事しますが、友人の薦めで三井銀行に入社し、常務取締役社長に就任しました。信託業法が制定されるといち早く信託会社を設立して、新分野を開拓し、その目的を“社会への貢献”とするなど、今日のフィランソロピー(Philanthropy*)の基盤を作りました。晩年は財団法人三井報恩会の理事長となり、ハンセン病・結核・癌研究など多くの社会事業・医療事業に奉仕しました。また、子供の教育のために、はる夫人と共に私財を投じて小学校を創立しました。“何事も人々からしてほしいと望むことは人々にもその通りせよ”これは米山梅吉氏の願いでもあり、ご自身の生涯そのものでした。“他人への思いやりと助け合い”の精神を身をもって行いつつ、そのことについて多くを語らなかった陰徳の人であったそうです。
*Philanthropy: ギリシャ語の「フィラン(愛)」と「アンソロポス(人類)」。人類愛・博愛を意味し、今日的には「社会貢献」とされる。
2.ロータリー米山記念奨学事業
全国のロータリアンからの寄付金を財源として、日本で学ぶ外国人留学生に奨学金を支給し、支援する国際奨学事業です。 事業の使命は、将来、日本と世界とを結ぶ「懸け橋」となって国際社会で活躍し、ロータリー運動の良き理解者となる人材を育成することです。これは、ロータリーの目指す“平和と国際理解の推進”そのものです。
3.半世紀にわたって受け継がれている事業
日本のロータリーの創始者、故・米山梅吉翁の偉業を記念し、後世に残るような有益な事業を立ち上げたい。1952年、東京ロータリークラブが発表したのは、海外から優秀な学生を日本に招き、勉学を支援する奨学事業、「米山基金」の構想でした。そこには、二度と戦争の悲劇を繰り返さないために、国際親善と世界平和に寄与したい…という、当時のロータリアンたちの強い願いがあったのです。
将来の日本の生きる道は平和しかない。その平和日本を世界に理解させるためには、アジアの国々から一人でも多くの留学生を日本に迎え入れて、平和日本を肌で感じてもらうしかない。それこそ、日本のロータリーに最もふさわしい国際奉仕事業ではないだろうか」
『ロータリー米山記念奨学会史』より
4.日本のロータリーのよる多地区合同奉仕活動
クラブ独立事業として始まったこの事業は、わずか5年で日本全国の共同事業へと発展。1967年には文部省(当時)を主務官庁とする(財)ロータリー米山記念奨学会が設立されました。50年以上の歴史を持つ、世界に類を見ない日本のロータリー独自の多地区合同奉仕活動となっています。
5.特徴その1 : 世話クラブ・カウンセラー制度
奨学生一人ひとりに対して、地域のロータリークラブから「世話クラブ」が選ばれ、ロータリーとの交流の起点となります。さらに、世話クラブ会員の中から「カウンセラー」がついて日常の相談役となり、奨学生が安心して留学生活が送れるよう配慮しています。
奨学金を支給するだけの団体も多いなか、米山記念奨学生は例会や地域の奉仕活動、日本の実業人・専門職業人であるロータリアンとの交流を通じて、真の日本を知り、ロータリーが求める平和の心を学んでいます。ロータリアンにとっても、奨学事業の意義を実感し、視野を広める機会となっています。
6・特徴その2 : 日本最大の民間奨学事業
年間の奨学生採用数はおよそ800人、事業費は14.3億円(2010年度決算)と、国内では民間最大の奨学事業です。これまでに支援した奨学生数は、累計で1万6,389人(2011年7月現在)。その出身国は、世界120の国と地域に及びます。
7.ロータリー米山記念奨学会の財政
奨学事業の財源は、全国のロータリアンから毎年いただく寄付で支えられています。2010-11年度の寄付金は13億1,400万円でした。年間800人の奨学支援には14億5,000万円が必要であり、不足分は特別積立財産を取り崩して補いました。
当会の資産は国債など元本償還の確実性が高い方法で運用しており、投資損失はなく、評価損益もプラスになっています。
8.よくあるご質問【奨学金制度編】
Q 日本人支援はしないのですか?
A 設立時の理念から、米山奨学金は一貫して外国人留学生のみを対象をしていますが、近年、日本の経済状況の悪化や若者の内向き志向が問題視されるに伴って、こうした声も寄せられています。
ロータリー米山記念奨学会では公益財団法人へ移行後、これらの課題や基本方針について理事会・評議員会で検討していきたいと考えています。
Q 最近、中国人などで裕福な人が多いような気がします。支援の必要があるのですか?
A 米山奨学金は経済的に困っているから支援するものではありません。勉学意欲があり、人物面・学業面が優秀で、将来、日本との懸け橋になりうる人材であれば、支援する意味があると考えています。2011年5月に実施したカウンセラーアンケート(有効回答者数411人)でも、「優秀性を重視すべき」との声が62%と、「経済面を重視すべき」(18%)を大きく上回っています。
Q 米山記念奨学生は中国人が多すぎるのでは?
A 奨学生827人(2011学年度)のうち47%が中国人と、国籍・地域別では最も多くなっていますが、実は、日本に来ている留学生の60%が中国人です。米山奨学会では各地区選考委員会に対し、1ヶ国に偏らない採用を呼びかけているほか、地区から指定校へ推薦者の国籍を分散させるよう要望することで、47%に抑えています。他の国籍に比べ、中国人奨学生は狭き門をくぐり抜けて採用されています。