卓話時間
第1745例会
2017年04月03日 (月曜日)
- タイトル :
- ゲスト卓話
「映画で広島を盛り上げる」
- 卓話者 :
- 脚本家 鴨 義信氏
脚本家の鴨義信です。今日のテーマは『映画で広島を盛り上げる』ということで、脚本とは何なのか、そして映画でどう広島を盛り上げてゆくか、そういう流れでお話しようと思います。
脚本とは・・建築で言えば設計図、音楽で言えば楽譜のようなものです。脚本に書かれたことを下敷きにスタッフがいろんな準備をします。映画に必要なことはすべて脚本に書かれています。脚本がなければ、俳優やスタッフは何ひとつ動けません。黒澤明監督がこう言っています。「いい脚本から悪い映画が生まれることもあるが、悪い脚本から良い映画が生まれることは決してない」
脚本は映像作品の根本をなすもので、すべては脚本から始まり、脚本が出来た段階で、その映像作品の価値はほぼ決まってしまう、それくらい重要なものです。
私は日本映画学校(現・日本映画大学)を卒業して渡米後、1999年に脚本家となりました。そして2011年、企画制作会社クォーボ・ピクチャーズを設立しました。映画を作るためです。アメリカに住んで日本を外から見たことによって日本の良さを知り、東日本大震災もあって人生について見つめ直した時に、自分の根っこの部分はやはり広島なのだなと気づきました。だから、映画を作るなら広島を舞台にしたいと思いました。ちょうど広島駅周辺の再開発で街が変わってゆく時だったので、「受け継いでゆく」ということをテーマに、映画『夏休みの地図』(2013年公開)を作りました。そして2015年、テレビ朝日と弊社で結婚をテーマにした『ハッピーランディング』という映画を制作し、一部エピソードを広島で撮影しました。
私は広島を映画文化の街にしたいと勝手に思っていますので、映画や演劇に興味を持つ人たちをもっともっと増やしてゆき、広島に拘って映画を作り続けたいです。
どうやって広島を映画で盛り上げるか――。
柱は2つ、演技ワークショップと広島映画制作です。演技ワークショップは、『エンターテイメント業界で活躍できる俳優を広島から生み出す』ことを実現するためです。俳優になりたいという人は数多くいますが、東京以外の場所ではなかなか第一線で活躍する演出家からの指導を受ける機会がありません。そんな地方と東京による演技に対する格差を解消します。
演技ワークショップには、3つのコースがあります。子どもコースは、子供の頃から演技に触れることのできる場を提供して、将来的に俳優として活動できるよう育成してゆくことを目的としています。演技を経験することは、夢を叶えるための経験を積むだけでなく、将来的にも様々な面で活かすことができるはずです。一般向けコースは、演技のスキルアップはもちろん、コミュニケーションや視野の広げ方など、一般社会でも役立つよう人間形成の場となることを目指します。企業向けは、表現力や想像力をアップさせて、「人に伝えるチカラ」を身につける。会社の営業職や接客業の方々のツールとして役立つと思いますので、企業研修や新人研修としても開催したいです。
「映画は祭だ!」。これは深作欣二監督の言葉です。広島で映画を作るためには、地元のみなさんの協力がなければ絶対に成功しません。みんなで映画という「祭」をやりたいです。そこで私が考えているのは、『映画を通して、街の良さを知ってもらい、街に活気と経済効果をもたらす、地域活性化プロジェクト』です。街の良さを映画にして、キャラクター商品などを地元企業と開発して、話題と経済効果を作り出します。できればそれを官民連携で取り組む。そして、映画の前後にイベントを開催して、宣伝効果を上げ、映画と街を盛り上げてゆきます。
例えば、三次の稲生物怪録を題材にした『妖怪物語』、食をテーマにした『お好み焼き』や『日本酒』などの企画を考えて動いています。
“希望学”というのがあります。希望を「行動」によって「何か」を「実現」しようとする「気持ち」。希望は伝播します。誰かが行動すれば、周りに影響します。思いは生き物ですから、思いがある限りつながってゆきます。もし今日お話した、どれかの企画にピンときたら、ぜひとも一緒に映画を作ってください! 映画は総合芸術です。だから、一緒に働く人が大事です。「この人たちとこんな仕事ができた」という経験の先に喜びがあります。自分の可能性に限界を引かない。行動に移す。めげない。情熱を貫けば、生きてゆける。そう信じています。今後も脚本家として、大きく鋭く、温かく骨っぽく、そして色っぽい……そんな物語を書いてゆきたいです。そして映画を作って、みなさんと一緒に広島を盛り上げたいです! 今日はありがとうございました!!