卓話時間
第1538例会
2012年04月16日 (月曜日)
- タイトル :
- ゲスト卓話「口から食べること」
- 卓話者 :
- 広島市医師会運営
安芸市民病院認定看護師 湯淺 愛氏
近年、医療の高度化に伴い複雑かつ特殊な技能を有する業務の増加と看護の役割の拡大により看護師のスペシャリスト志向が強まった。このことから、医療の質や看護の質の向上を目的とし、認定看護師制度が開始となった。認定看護師は、特定の分野において熟練した看護技術と知識を用いて、水準の高い看護実践をできる者をいう。現在、認定看護師は21分野あり、安芸市民病院(以下当院とする)では、5分野(感染管理、透析看護、緩和ケア、皮膚・排泄ケア、摂食・嚥下障害看護)7名の認定看護師が在籍し活動している。
摂食・嚥下障害看護認定看護師とは、「口から食べる」ことに関して何等かの障害を生じた方を対象に、安全においしく食べることを目標に看護実践している。口から食べることの重要性は、現代の社会において日に日にクローズアップされており、私のところへ相談に来られる患者様の人数も増加している。口から食べることに関して、高齢者の増加や、口から食べることが難しくなった場合に、鼻から管を通したり、お腹に穴を開けて直接胃に栄養を投与すること、現代の死因(脳血管障害、肺炎、不慮の事故)などの社会背景が関与しているのではないかと考える。特に、口から食べることが人間にとって自然の摂理であるならば、胃に直接栄養を投与する方法については疑問に感じることがある。口から食べる時は、目で食べ物を見て、手で箸やスプーンを使い口に食べ物を運び、口の中に入った食べ物を美味しいと感じるといった行為を行っているが、口から食べないことでこのような一連の動作が行われなくなる。そのため、「おいしい」という味覚や食べ物を認識する情報の視覚からの刺激が失われる。また、食べる時に使用する手の動きも消失することで寝たきりとなってしまう可能性が高い。このことから、胃に直接栄養を投与する方法に関して行うべきか、慎重に検討していくべきである。
当院での私の認定看護師としての活動だが、嚥下リハビリチームを主体に活動を行っている。嚥下リハビリチームは作業療法士、管理栄養士、放射線技師、看護師からなる多職種のチームである。入院患者様を対象に、食事場面を観察し適切な食事を食べられているか、食べている時の姿勢はどうか、スプーンや箸は患者様に適しているかなど観察を行い、安全に口から食べて頂けるよう支援している。また、嚥下障害の患者様にはパンフレットを用いて嚥下訓練を行なったり、当院で提供している食事について管理栄養士と相談し改良を重ねている。
患者様の「おいしい」笑顔に出会えたときの感動は私のモチベーションの支えとなる。今後も引き続き、口から食べることに問題を抱えておられる方に対し、認定看護師として「口から食べる」看護を提供していきたいと考える。