卓話時間
第1710例会
2016年06月07日 (火曜日)
- タイトル :
- ゲス地卓話
「なぜ日本酒がおいしくなっているのか」
- 卓話者 :
- 独立行政法人 種類総合研究所研究企画
知財部門部門長 山岡 洋氏
清酒は、ビールやワインと同じ醸造酒であり、日本の伝統的なお酒です。清酒は、日本人の主食であるお米を原料にしていますので、私たちの生活に深く根ざし、独自の飲酒文化を形成してきました。近年は、海外でも日本食に興味を持つ方が増え、清酒も海を越えて世界中の多くの方々に飲まれるようになりました。
なお、平成27年12月25日から、国内産米のみを使い、かつ、日本国内で製造された清酒のみが、「日本酒」と名乗ることができるようになっています。
そうした日本酒がなぜおいしくなっているのかについて、いくつかその背景を説明いたします。
1.特定名称酒
平成元年当時、酒造技術の発達や消費の多様化にともなって、吟醸酒、純米酒、本醸造酒といったさまざまなタイプの清酒が店頭で見られるようになりました。しかし、その表示には法的なルールがなかったので、消費者にはどのような品質のものかよくわからない、という声が高まりました。そこで平成元年に「清酒の製法表示基準」が定められ、平成2年4月から適用されています。
この表示基準では、①吟醸酒、純米酒、本醸造酒といった特定名称を表示する場合の基準を定めるとともに、すべての清酒について、②清酒の容器などに表示しなければならない事項の基準、③清酒の容器などに任意に表示できる事項の基準、④清酒の容器などに表示してはならない事項の基準が定められました。これらは、消費者の方の商品選択の大きなよりどころとなっています。
この表示基準で定められている特定名称酒の比率は徐々に増加していまして、平成26酒造年度では30%を超えています。このように、付加価値の高い商品の比率が高まっていることが要因の一つであると考えられます。
2.品質の多様化
表示基準では、③清酒の容器などに任意に表示できる事項として、原酒、生酒、生貯蔵酒、生一本、樽酒の基準が定められています。これらは、それぞれ品質に特徴のある日本酒ですが、これら以外にも、ひやおろし、搾りたて、長期熟成酒(古酒・秘蔵酒)、低アルコール清酒、活性清酒など様々なタイプの日本酒が販売されています。
また、香りについては、フレッシュでフルーティーなものから落ち着いた深みのある香りのものまで、味についても、甘口・辛口の違いだけでなく、軽快なものから重厚で膨らみのあるタイプのものまでと、多種多様な品質の日本酒があります。
最近では、発泡性のある日本酒もよく目にするようになりましたし、燗酒も見直され始めています。品質だけでなく、飲み方についてもバラエティがあり、同じ日本酒でも提供のされ方によって味わいに違いが出てきます。
このように、味わいや楽しみ方のほか、料理との組み合わせを変えることによっても、様々な印象を受けることになります。「(以前に比べて)日本酒がおいしくなっている(変わってきている)という感じを持つようになった。」ことには、多くの面での多様化が影響していると考えられます。
「日本酒は奥が深いお酒」と思われる方が多くいらっしゃるかもしれませんが、酒類総合研究所のホームページでは、「お酒の情報」として皆様の参考となる情報を多数掲載しています。ご興味のある方は、一度ご覧いただきますとともに、ご意見等をお寄せいただければ幸いです。