卓話時間
第1581例会
2013年04月22日 (月曜日)
- タイトル :
- ゲスト卓話[はだしのゲン]中沢啓治さんの遺言
- 卓話者 :
- RCC 報道部 藤原大介氏
中沢啓治さんは最初の原爆漫画で米国人専門の殺し屋を描きました。「恨み」が全面に出ていました。はだしのゲンでは、主人公ゲンが逆境に耐える姿を描き、「生きる」という普遍的な物語へ高めました。
中沢さんを取材した記者は数多くいます。自分は晩年に機会を得ました。去年3月に診療の様子を取材した際、レントゲン写真にショックを受けました。がんが体中に転移していました。その時の映像は放送せず、今も「封印」してあります。それほど体調が悪いのに講演や取材の依頼に応じ、原爆を生涯問い続けました。
遺骨は埼玉の自宅にあります。普通の机の上に置かれ、線香も焚かれていません。「原爆の時の死臭を思い出すから」と線香を嫌った本人の意向に沿っているそうです。
ゲンは18か国語で出版され、さらに中国語などへ翻訳中です。国境や民族を超え共感を呼ぶ理由は、作品の面白さだけではないでしょう。日本の戦争被害だけでなく、加害にも触れた点が「公平」と受け止められているのかもしれません。
妻ミサヨさんから伝言を預かりました。中沢さんはオバマ米大統領へ英語版のゲンを届ける願いを果たせないまま、去年12月に亡くなりました。大統領へのルートで心当たりのある方はぜひ情報をお寄せ下さい。