卓話時間
第1573例会
2013年02月18日 (月曜日)
- タイトル :
- ゲスト卓話「ゴルフを通して得たもの」
- 卓話者 :
- プロゴルファ- 倉本昌弘氏
先日中国新聞に広島中央ロータリークラブがスナッグゴルフセットを寄贈された記事を見て、私たちゴルフ関係者一同、大変嬉しく思いました。スナッグゴルクがなぜできたかですが、初心者にとってゴルフは難しいので、少しでも優しくプレーが出来るよう開発されたものなのです。スナッグ(SNAG)の意味は、Starting New At Golf(ゴルフを始めるために)というものです。子どもたちが新たにゴルフを始めるにあたって,スナッグゴルフのボールは馴染みやすくするためテニスボールに似せていますが、重さは本当のゴルフボールと同じにできています。
私は広島市の小学校全校にスナッグゴルフを寄贈したいという思いがあり,2009年に広島県ジュニアゴルフ振興会を立ち上げこの寄贈活動を始め,今年までに23校への寄贈を行いました。スナッグゴルフのイラストを描いた支援自動販売機を設置して下さる企業や個人を募り、その売上の一部の寄付金が原資となっています。今現在53台が稼働しています。スナッグゴルフのスクールセットは24万円しますが、1つあれば、1クラス・1学年の学生がプレーできます。直接企業や個人からまとまった寄付金を募る事もできますが、そのような形態は景気に左右されてしまい年によって金額が減り何校に提供できるかが左右されてしまいます。それ対し、自販機の寄付金は、設置者と、一本一本のドリンクを購入して下さる一般市民のご厚意で成り立っているので安定した金額が確保出来るため、毎年4~5校への寄贈出来るペースを維持しています。広島市には144小学校があるので,まだまだ時間がかかります。また、寄贈するだけで終わらせる事なく、セットを活用もらう働きも大切な活動となります。校長先生などが異動されますと活用されないままセットが眠ってしまう事があります。今後は、既に寄付したところにインストラクターを派遣し、掘り起こしをしていこうと考えています。もし、「自動販売機を置いてあげるよ」という方がいらっしゃいましたら、子どもたちのためなので、是非お願いしたいと思います。
ゴルフを通じて得たものは,端的に1つだと思うんです。「人と人とのつながり」ではないかなと思います。
私は,子どもの頃からゴルフを始めました。父に連れて行かれて嫌々行きました。当たらない,飛ばない,いろんな制限もある,周りは大人ばかりで,全く面白くなかったです。ただ,連れて行かれるうちに,あれ飛んだ,あれまっすぐ行ったという喜びを知りました。隣のおじさんよりも飛んだ,まっすぐ打てる,こういうところから単純に続いていったんです。舟入のゴルフ練習場で,ゴルフボール24個入りの木箱を自分の身長まで積み上げるのが楽しみでした。そのときに知り合ったのが第1の師匠である福井康雄先生でした。福井先生がいなかったらゴルフを続けてなかったと思います。「思い切って打ちなさい。曲がって気にするな。飛ばしなさい」という程度のアドバイスでしたが,一言一言お声をかけて下さいました。
次に知り合ったのが,広島ゴルフ倶楽部鈴ヶ峰コースの松本仁志さんでした。この方は私の今のゴルフの基礎を作って下さった方です。私はコースのメンバーになって,夏休み・冬休みはクラブハウスに寝泊まりして,行き帰りの時間を惜しんでラウンドしていました。
次に,私が大学に行って開花させてくれたのが,日大の竹田監督と鍋島直要(なおもと)さんでした。そのときに「日本にいても強くならないよ。海外に行きなさい」と言われて,私はアメリカへ行きました。
そういう人たちのつながりで,ゴルフが開花されてきました。
アメリカで一番最初に覚えたことは何かというと,ゴルフで有名になって社会的地位が上がると,社会的責任も上がるということ,それなりに社会に奉仕していかないといけないということでした。アメリカの年間放映権料が約500億ですが,そのうち約200億はチャリティー活動に使われ,残りは選手の年金なんです。PGAツアーでは,チャリティーこそが賞金王と言われており、活動の中心はチャリティーにあります。私は,心臓弁膜症の手術を受けてツアーに復帰しましたが,アメリカのツアーはこの手術のことを知っています。彼らのセットアップで各地の病院に入院している子どもや大人を訪問します。用意された車で病院に行くと必ず地元の新聞社が待っていて,子どもたちと握手をしたり,サインをしたり,施設を見学する姿が写真に撮られます。翌日,試合初日に地元新聞の一面で報道されているので、1番ティーで私が紹介されると、たくさんのギャラリーが新聞を見ているため、「よく来てくれた」「ナイスショット」といって褒めてくれるんです。褒めてくれると嬉しくなってまた行きたいと思うんですね。これがアメリカのうまいところですね。彼らはうまく選手を使います。
日本の選手会長になって最初にやりたかったのは,がん撲滅なんです。当初「がんは撲滅できない」と言われて反対されたんですが,ゴルフを愛する多くの友達をガンで失っておりましたので,助けられるのならと思い,毎年1000万円ずつの寄付を目標に20数年間やってきました。もう1つ、雲仙普賢岳の大噴火があったときに,いろんな政財界の方にお金を出してもらって寄付しました。
人と人とのつながりは,人と人との思いやりだと思います。私たちスポーツ・芸能は有事になれば一番最初になくなる商売です。でも,復興の後押しをしたのもスポーツ・芸能なんです。やはり,人と人とのつながりを大事にしながら,私たちが今できることをやっていっています。東日本大震災の支援もやっておりまして,賞金の4%(約1億2000万円)を寄付しています。子どもたちが私たちを夢をもって見てくれるような社会を作っていくことが,人間社会の存続に繋がるのだと思っています。
せっかくですから,少しはゴルフがうまくなる話もしたいと思います。腕はお金で買えますので,道具はしっかりいい物を買って下さい。いい物とは,高い物ではありません。自分に合った物なんです。ですから,一緒に行った仲間がうまくいったから,すぐ翌日にどこかのショップに行って買うのは止めてください(会場笑)。試打をやっているショップがあったら,必ず試打をしてください。試打のポイントですが,ゴルフに行ったときと同じ服装をしてください。そうすることで、初めて正確なデータが出て、クラブを選ぶことができるんです。ボールは何でも一緒ではありません。今の時期は球が上がりにくいので,ディスタンス系を使い、春になってグリーンが止まるようになったら,スピン系を使ってください。ヘッドスピードのない人は、スピン量があると球が上がらないんです。私でも夏よりも冬の方がヘッドスピードが遅くなりますから、今の時期は飛ばないのは当たり前です。
最後になりますが、レッスンを受けると絶対に違います。ずっと受けなさいということではなく、「自分の方向性を教えてください」と言って、たまにでいいので教えてもらってください。欠点を直してくださいと言っても無理です。
この寒い時期に地道な練習をすることで、暖かくなる頃には絶対違いが出てきます。家にいるときぐらいパットの練習、素振りをするだけでも違います。
時間を過ぎましたので,これで終わらせていただきます。