卓話時間
第1489例会
2011年02月28日 (月曜日)
- タイトル :
- 広島・首都圏の分譲マンション市場動向
- 卓話者 :
- 竹川誠一君
広島都市圏では2001年から2010年の10年間で平均約2,400戸の供給がありました。ところが、この5年間をみますと、2006年の約3,600戸をピークに毎年大幅な減少が続き、2010年の供給はわずか約1,000戸の低水準にとどまっています。しかし、2011年は2月時点で約1,500戸の供給が確認され、後半の分譲状況次第では2,000戸に迫る可能性もあります。
首都圏においても2005年の約84,000戸から2009年には約36,000戸にまで落ち込みましたが2010年には前年度比22%アップの約44,500戸が供給され、2011年予測では約50,000戸にまで回復してきています。
そもそもここ数年のマンション市場の大凋落は何が原因だったのでしょうか?
まだ不動産業界がミニバブルとも言える好況を呈していた2005年11月、国土交通省はある建築設計事務所が構造計算書を偽装していた事実を発表しました。そしてこの事件が発端となり、日本列島の建設業界を震撼させる「耐震偽装問題」へと連鎖していきます。
そして事態の解決を図るべく2007年6月「新建築基準法」が施行されますが、建築確認の認可が大幅に遅延し、業界は混乱し停滞。同時期に建設資材が高騰し、建築コストの上昇は価格にはねかえり、購入マインドの低下を招きます。
さらに追い討ちをかけたのが2008年9月の「リーマンショック」。金融機関は軒並大幅赤字に転落、支援を打切られた新興デベロッパーが次々に破綻し、さらに金融機関の損失が膨らむというまさに負のスパイラルに陥りました。
この様に、ここ数年間のマンション市場の縮小は買手側の購買意欲の低下もさる事ながら、それ以上に売手側であるデベロッパー、そしてそれを支えるファイナンスの要因が大きく作用したといえます。
さて、「リーマンショック」以降、停滞していたマンション市場もここに来てようやく好転のきざしを見せ始めました。
首都圏ではすでに2010年から回復基調に向かい、広島都市圏でも2011年に入り、各デベロッパーの動きは活発化しています。もとより、ゼネコンや設備業者等、すそ野の広い産業でもあり、家具・家電の買い替え需要も喚起できるマンション業界。大型消費をもたらす担い手として、さらには景気回復の水先案内人として、その存在感とともに果たすべき役割は非常に大きいと言えるでしょう。