卓話時間

第1747例会
2017年04月17日 (月曜日) 12:30
広島原爆障害対策協議会 平松恵一会長(RC会員)
同協議会健康管理・増進センター 藤原佐枝子所長(RC会員)
広島市医師会臨床検査センター  谷敷圭美センター長
第1746例会
2017年04月10日 (月曜日) 12:30
アメリカンドリーム代表 吉川浩司氏
第1745例会
2017年04月03日 (月曜日) 12:30
脚本家 鴨 義信氏

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第1218例会

2004年09月06日 (月曜日)

タイトル :
高齢者の眼の障害
卓話者 :
広島大学 眼科学 三嶋 弘君

先日、日経「Masters」という雑誌で、平均寿命についての資料が掲載されていました。平均寿命は右肩あがりで、これからますます日本が長寿社会になっていくことが、予想されます。これからの長寿社会において、健康を維持することが重要になってきます。加齢に伴って、どうしても諸機能が低下していきますが、その中でも、眼の機能は重要な役割を担っており、今日はその「眼の機能」についてお話させていただきます。
眼の調節力の衰え(いわゆる老眼)は、すでに20歳頃から下がってきます。実際に老眼に気づくのは、35歳から45歳です。直径2.5・の眼は、微細なものから宇宙まで見える働きをもっていて、人は、外界の情報のうち、2/3以上を眼から得ています。
WHO(世界保健機構)は、2020年までに、世界中の失明者を半減しようというプロジェクト、Vision2020を2000年から開始しており、日本もこれに賛同しています。現在、世界の中で、失明者が多いのは、アフリカ、アジア地域です。1998年から2020年まで推計的にいきますと約1億人が失明者になりますが、それを半減しようというプロジェクトがVision2020です。
私たちの目は2つあり、よくカメラにたとえられます。カメラに写した外界の形、色、明暗を視神経というケーブルに乗せて、脳へ伝えることによって、脳の方で感知をして、ものが見え、いろんなことが分かります。透明な角膜、水晶体は、カメラのレンズの働きをします。
ところで、眼科医を34年間しておりますと、多くの白内障手術症例を経験してきました。私が大学を卒業した時の日本での年間の白内障の手術件数は、3万件か4万件でした。しかし、2004年では、これが100万件近くまで増加しています。つまりは、いかに高齢者が多くなったかとも言えます。別の言い方をしますと、100万件の白内障の手術をすることによって、手術を受けた多くの人々が、再びきちんとものが見えるようになり、幸せになった患者さんが増えたことになります。だから、眼科医は、毎年多くの白内障手術を行い、大忙しです。
白内障手術に関しては、1943年、イギリスの眼科医、リドレーという人が、現在の眼内レンズ挿入術を考案しました。リドレーは、空軍パイロットの風防グラスが目に入っても、何の異常が起こらないということに気がつき、眼の中の濁った水晶体の代りにガラスの人工水晶体を入れることを思いつきました。この発明により、リドレーは、エリザベス女王、クリントン大統領夫人から、数億人の視機能を救ったということで表彰を受けております。残念なことに、2年前に100歳で亡くなられました。自分が考案した白内障の手術をまさか自分が受けるとは思わなかったと言いつつ、白内障手術を受けました。
白内障手術は、濁った水晶体を、1.5・の非常に細かい精密な機械を使い、超音波で破砕、吸引して、代りに人工水晶体を入れます。
今年6月に、中国新聞に広島大学眼科が痴呆患者に行った「白内障手術で痴呆が改善」という記事が掲載されましたが、私が言っておりますのは、白内障手術をすることで痴呆が改善するのではなく、痴呆患者さんの生活の質が向上することです。痴呆の程度は改善しておりません。生活の質が改善することによって、介護者の負担軽減などの効果がありました。
さて、眼は、長い間、60年、70年、中にはそれ以上の期間使用されますが、80歳、90歳で手術をした人の視力を測りましても、そんなに悪くなっていません。つまり、眼の中の網膜というのは、60年70年80年使っても、わりに障害が起きていないといういことです。
現在、さまざまなところで、角膜の移植が行われております。今回、広島県では、2004年6月から、広島ドナーバンクができました。最初は、広島角膜バンクでしたが、腎バンクが加わり、さらに今年度から骨髄バンクが加わったことで、広島ドナーバンクとして発足いたしました。本日、ドナーカードをお渡しいたしますので、移植医療の必要性をご理解いただき、多くの方々のご支援をいただけたらと思います。
角膜移植も年々数が減っております。広島大学では、年間、25~35件の角膜移植をしておりますが、200人以上の人が移植を待っております。3月17日付の中国新聞では、角膜提供者数が、2003年に広島で初めて40人を超えて、全国で3番目となりました。角膜提供が多いのは、長野県と静岡県です。数百人単位で角膜提供があります。広島県医師会長の碓井静照先生が理事長をつとめておられます。碓井理事長、および平田敏夫専務理事が、非常に熱心に活動しておられ、中国地方では、広島県のバンクの活動が大変活発です。
さて、加齢に伴います眼の問題として、白内障以外に、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、緑内障があります。この言葉の一つぐらいはお聞きになったことがあるかと思います。
黄斑というのは、ものを見る網膜の一番中心部分です。ここに2種類の視細胞があります。これが正常に働くことによって、形がハッキリ見える、色が見える、明暗が分かります。しかし、糖尿病の場合、白班が出たり、出血したりします。糖尿病網膜症の最終段階になるまで気づかないことが多くあります。糖尿病の期間が長ければ長いほど、確実に糖尿病網膜症になります。ですから、適度な運動、食事制限、過度の負担をかけないように心がけ、健康的な生活が大切です。
糖尿病網膜症では、眼底で異常な血管増殖がおこります。そこにレーザー治療をします。これは非常に効果があります。この治療は、1963年に広島大学眼科が、日本で最初のみならず、東洋で最初に行いました。私が学生時代に眼科
主任であった百々次夫教授がされました。現在、
非常にポピュラーな治療法となっています。また、異常な血管がある時は、硝子体手術もしております。広島では、大学病院をはじめ、いくつかの病院で硝子体手術をおこなっておりますが、1951年に広島大学の眼科が、世界で最初にこの硝子体手術を行いました。その後、アメリカでこの方法がさらに改良、進歩して、今は、糖尿病網膜症の人で、早い時期にレーザー治療を受け、硝子体手術を受ければ、失明までに至らない症例が増えています。しかし、根本的に糖尿病があり、完治するというわけではありません。
加齢黄斑変性は、黄斑部に異常の変化が起こります。この異常の発症についてはよく分かっていませんが、中心部だけが見えなくなってきます。加齢黄斑変性は一方の眼に起こりますと、もう一方の眼に起こる人が非常に多いようです。ものがゆがんで見える、小さく見える、大きく見える、中心部だけが見えないなどの症状です。これは、現在、西ヨーロッパ、日本、北米と先進国で増加しています。
緑内障も、なかなか難治な疾患です。2004年の現在でも、緑内障という病気がどうして起こるのかは分かっていません。私共も一生懸命、緑内障の発症のメカニズムの解明と、新しい治療法の開発に取り組んでいます。現在行われている治療法は、点眼薬で眼圧を下げる、レーザー光線の治療、手術をすることによって眼圧を下げて、患者さんが現在見えている状況を保持することです。患者さんが50~60歳であれば、生涯、見える状態を保たせるということに我々は尽力します。眼圧の異常のみならず、さまざまな異常が起こることによって、網膜の神経細胞死が起こり、それにより、中心の部分が見えなくなります。2000年から2002年に、岐阜県の多治見市で緑内障の疫学調査を行いました。その結果、40歳の人々の約5.8%が緑内障で、70歳では、これが約9%に増加しています。緑内障の治療がこれから益々重要となってきます。
さて、中国新聞の記事にもありましたが、白内障手術によって痴呆患者の生活の質が改善するなど、眼と脳との関係も最近注目されつつあります。これからの課題として、脳と眼の観点からの研究も進めていきたいと考えております。
ロータリークラブの皆様には、ぜひとも、やさしい医療、人へのやさしい思いやりを実践していただき、広島ドナーバンクにご協力いただければ幸いに存じます。

Posted by 事務局 at 12時30分

2016-2017年度

本日の広島中央RCの予定

2017 6/30Friday

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これからの広島中央RCの予定

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