卓話時間

第1747例会
2017年04月17日 (月曜日) 12:30
広島原爆障害対策協議会 平松恵一会長(RC会員)
同協議会健康管理・増進センター 藤原佐枝子所長(RC会員)
広島市医師会臨床検査センター  谷敷圭美センター長
第1746例会
2017年04月10日 (月曜日) 12:30
アメリカンドリーム代表 吉川浩司氏
第1745例会
2017年04月03日 (月曜日) 12:30
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第1611例会

2014年01月20日 (月曜日)

タイトル :
クラブフォーラム(職業奉仕)
「社会経験を活かした発展途上国での貢献活動」
卓話者 :
特立行政法人国際協力機構(Jica)
国際協力推進員(広島県) 大塚善久氏

職業奉仕委員長 神田栄治

クラブフォーラム(職業奉仕)
職業奉仕委員長  神田栄治
 本日は、クラブフォーラム(職業奉仕)となっております。宅話のゲストをお招きしておりますが、その前に「職業奉仕」について、おさらいをしておきます。
そもそも、ロータリー運動は、資本主義の中で「最高の利益を追求したい」という欲求と「世のため人のために、いかにすべきか」ということを調和する哲学といわれております。「自分の幸せは、自分の周りにいる人々の幸せと無関係でなく、自分の職業と関係を持つ、すべての人に幸せをもたらすこと」その奉仕の精神の必要性を日常の職業生活で実践していくこと。これが職業奉仕の理論といわれています。
 そのためには、職業の倫理観、道徳水準を高め、職業を通じて社会に貢献することです。自分の仕事は、社会に奉仕する一つの手段であり、能力と高潔さを持って行う自らの仕事に誇りを持ち、相手の立場に立って考え、他人のために役に立つ行動をし、謙虚で思いやりのある行為が大切であるとしています。具体的には職業人としての心構えを簡潔にかつ的確にまとめたのが、「四つのテスト」の実践です。
 このロータリー活動を通じ、よりよい社会生活を営むため、心豊かな人間性を養い、思いやりのある心を学び、自らの職業を通じて社会に奉仕していきましょう。
お客様をご紹介いたします。
 国際協力機構(JICA)の国際協力推進員、大塚善久様です。大塚様は、青年海外協力隊員の経験をおもちで、民間企業で営業マンとして勤務された後、青年海外協力隊に参加、2007年から2年間アフリカ南東部に位置するマラウイ共和国において、農村地域の生活向上のため支援活動を行い、2009年に帰国、現在、広島でJICAの国際協力推進員として活躍されております。
 今日は、「社会経験を活かした発展途上国での貢献活動」についてお話をいただきます。ロータリー活動の参考になるものと思います。それでは大塚様よろしくお願いします。

Jica国際協力推進員 大塚善久氏

 JICAは、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っています。その中で私はJICA事業の市民参加協力の広島県窓口として、一般市民の方々からのお問い合わせや各種相談対応をはじめ、JICAが実施するボランティア事業、開発教育支援(小~高校、大学等における国際理解教育)を主に担当しています。
 東京出身の私は、JICAのボランティア事業である青年海外協力隊に参加するまで、本田技研工業(株)が100%出資する四輪新車販売会社の営業マンとして、東京で約5年間勤務していました。ホンダが初代FITを発表してから間もなくの2002年に入社。目指すは日本一の営業マンと意気込んで仕事に励んだところ、順調に成績を残すことが出来ました。その仕事の中で、私にとって次第に大きな目標となっていったのが、お客様に最高の満足感を味わっていただきたいという「オンリーワン」という考え方。もちろん営業マンは数字が勝負と言われますが、数字だけをがむしゃらに追いかけて得る「ナンバーワン」よりも、お客様との出会いを大切にし、売る側と買う側の立場を超えた「感謝のキャッチボール」をしながら、お客様にとって一番の存在になることがナンバーワンには必要だというこだわりが芽生え始めました。買う側のお客様が、単純に商品の価値だけでなく、売る側の想いにも価値や魅力を感じていただけたら、車を大切に乗る、大切に車に乗るということは、車を通じて家族の貴重な思い出の1ページを作ることや、結果的に安全運転を心掛け、事故も起こりにくくなる、そのような想いも日々の仕事のプロ意識として強くなっていきました。
 人生の転機が訪れたのは、私が26歳になった頃。健康だった父が末期の癌と宣告され、間もなく58歳という若さで他界しました。それまで、人生は長いものだと勝手に決めつけ、仕事には一生懸命になっていても、生きるということにどこまで一生懸命になっているのかという疑問が生まれました。そして次第に、何事も後回しにせず、やりたいと思ったことはやらずに諦めるのではなく、積極的に挑戦して後悔のない人生を送りたいと考えるようになりました。
果たして自分の営業マンとしての力量はどの位のものなのか、ホンダという看板がない状態で個人として通用するのかという疑問もありましたが、それ以上にもっと大舞台で人の役に立てるようなことがしたい、人間としてもっと成長したいと、漠然と転職や起業など、様々な選択肢を模索し始めるようになりました。
 そんな中、知人の紹介で一人の青年海外協力隊経験者と出会い、開発途上国における青年海外協力隊の活動について話を聞き、かつて経験したことがないほどの衝撃を受けました。自分の技術や情熱が人の役に立ち、さらに日本という国をあまり知らない人たちと2年間ともに生活することで目に見えない自分自身の成長に繋がるかも知れない、そう思うと居ても立ってもいられず、平成18年度の春の募集で青年海外協力隊を受験。派遣希望の第一志望だった、アフリカ・マラウイ共和国へ村落開発普及員として派遣されることが決定しました。おそらく私自身の想いが、青年海外協力隊の3つの大きな派遣目的(1)開発途上国の経済・社会の発展、復興への寄与(2)友好親善・相互理解の深化(3)国際的視野の涵養とボランティア経験の社会還元、に合致していたことも参加へ踏み切る大きな要素だったと思っています。
 しかし、当時私は400人を超えるお客様を担当する営業マン。お客様に会社を退職して青年海外協力隊に参加すると伝えることに対して申し訳ない気持ちでいっぱいでした。しかし、逆にお客様からたくさんの激励や感謝の気持ちを伝えていただき、多くの方から「大塚さんと出会えて良かった」という言葉を掛けていただきました。そして、改めて右も左も分からない若者を一から育ててくれた会社や上司、先輩、後輩にも言葉では言い表せない感謝の気持ちを抱くことが出来ました。
 約70日に及ぶ福島県二本松市での派遣前訓練を終えた私は、2007年3月アフリカ・マラウイ共和国へ赴任しました。アフリカ南東部に位置するマラウイは、農業・保健医療・教育・行政・社会福祉・商業に至るまであらゆる課題を抱えた世界最貧国の一つです。その中で私の派遣要請は、マラウイの東部サリマ県の農業省に所属し、農村地域を巡回し、地域が抱える課題、とりわけ農産物の販売指導や新商品の開発、マーケティング指導などを中心に活動するというものでした。もともと流通ビジネスという分野を専門としていた私は、ホンダ製のオートバイで村々を巡回し、農村地域で試行錯誤しながら活動を展開しました。
しかし、言語や文化・風習の違いなどの違いもあり、活動は思うようには進みません。日本では数日で終わるようなことに数ヶ月の月日を要することもあります。「自分の存在や活動は現地の人たちの役に立っているのか」「自分がここにいる意味はあるのだろうか」幾度も焦り、苛立ち、悩みを繰り返しました。アフリカの大地で「異文化」を理解するまでには、だいぶ時間がかかりましたが、現地の言葉を覚え、一緒に汗を流し、食事をしたり、何気ない会話をする中で、いつしか肌の色や人種を超えた人間同士の信頼関係が築かれていきました。何よりも、技術を教えに行ったのに、逆に人としての生き方を教わったと言っても過言ではないほど、マラウイの人たちの温かい心に支えられ、活動をしていた小さな村では、生まれた赤ん坊の名付け親にもなりました。
 マラウイの人々は、日本人からすれば信じられないというほどの生活を日々送っているにも関わらず、底抜けの明るさと人懐っこさで、常にコミュニケーションを重視した人間関係を築こうとします。それを見ていると、豊かさとは何なのかということについて考えさせられました。途上国と言っても、どの国にも様々な歴史や発展を困難にする背景があり、しかしそれだけではなく、民族としての誇りや伝統や文化、宗教観もあります。ですから、私は現場で活動する中で、マラウイの人々を「恵まれない弱者」という視点だけで見ることは出来ませんでした。それ以上に、彼らの心の豊かさに日々圧倒されていました。
 帰国して5年が経ちますが、自分の活動がマラウイだけでなく、世界が抱える課題に対して、例え大海の一滴だったとしても、一人の日本人がマラウイという異国の地で、一生懸命現地の人々の生活を豊かにするために活動出来たことに、マラウイの人たちが私を一人の人間として受け入れてくれたという感謝の念が絶えません。そして、日本から遠く離れた異国で生活したからこそ、感じることが出来たこともたくさんありました。現地で悩みながらも自分自身の心の支えになってくれたのは、たくさんの愛を注ぎ育ててくれた両親への感謝であり、仕事の中で私を支えてくれたお客様の心であり、私の祖国である日本という国や祖先だったり、陰ながら応援し続けてくれたたくさんの仲間たちだったりと、日本での生活では気付かなかった感情が次から次へと芽生えました。
 現代社会は、自分さえ良ければそれで良い、他人のことを気にしている余裕はない、といった他人との関わりを避けるような日常が当たり前になりつつあるように感じます。時代は日々変化を見せ、より良い家庭、地域、社会、国を築いていくのは容易ではないと感じることもあります。ただ、その中で絶対に欠かせないのが「人」という存在の力だと信じています。日本だけでなく、世界の課題を他人任せにせず、一人一人が自分の使命を果たすという職業感や価値観、倫理観を持ち続けられたら、どんなに素晴らしいことでしょう。次世代を担う「人間味溢れる」貴重な人材を育てるのは、教育機関だけの役割ではなく、同じ社会で生きる我々一人一人の役割だとも感じています。私自身にとっても、青年海外協力隊やこれまでの職業、人生で培ってきた経験をいかに社会貢献という形で生かせるか、日々使命感を持たざるを得ません。私は今後どのような環境に身を置いても、常に目標を見出し、世のため人のため力強く生きていきたいと思っています。
 長くなりましたが、この度はこのような貴重な場で、大変素晴らしい機会をいただけたこと、心から感謝いたしております。今後も貴団体の活動を通じて、より良い社会が築かれること、また今後も微力ながらお手伝いさせていただくことが出来れば幸いです。この場をお借りして、当日私の拙い話に耳を傾けてくださった全ての方々に厚く御礼申し上げます。

Posted by IT at 12時30分

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2017 6/30Friday

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