卓話時間
第1601例会
2013年10月21日 (月曜日)
- タイトル :
- ゲスト卓話
伝統的工芸品[福山琴]
- 卓話者 :
- 伝統的工芸品福山琴
福山邦楽器製造(協)理事長 小川賢三 氏
伝統的工芸品パートⅡは、福山琴から福山邦楽器製造(協)小川賢三理事長をお迎えして、福山琴の現状を伺うことが出来た。後半では、福山琴の実演で「さくら」を聞かせて頂いた。
琴の形は、架空の動物である「竜」になぞらえてあります。
その為、表の甲の木目が「竜」の鱗の様にたとえ、またそれぞれの部分を竜の舌、あるいは口・角と言う様に名付けてあります。
琴は、竜甲と呼ばれる表甲のくり貫いた部分と、背板と呼ばれる裏板の部分から成ります。 背板には、補強の為のはり板が施されていますが、中は空洞になっています。
この形の物に、柏葉・雲角・竜角等が取り付けられていきます。
琴の表甲に現れる木目は、丸い桐の木のどの部分から切り取るかで変わってきます。 木の年輪が、詰まったいる部分、す。なわち日陰であった部分が、一番木が詰んでいて、木目も細かく出るところです。
また、柾目の部分を表甲に使った「柾琴」もあります。
2010年4月に打ち上げされたスペースシャトル「ディスカバリー」。このスペースシャトルに搭乗した日本人宇宙飛行士である山崎直子さんがある楽器を持っていき、宇宙で演奏したそうです。広島県の伝統工芸品である福山琴です。
福山琴は全国生産量70%を占める広島の伝統工芸品です。山崎さんは幼いころからこの琴を弾いていたそうで、今回の搭乗にあたってミニ琴の制作を希望されたそうです。昭和60年5月22日に楽器として初めて伝統工芸品に認定された福山琴の歴史はどのようなものなのでしょうか。
福山琴は福山城が築城された1619年(元和5年)ことに始まると言われています。当時、江戸の城下町では歌謡、音曲などの芸事が盛んに行われており、福山でも歴代藩主が奨励したことによって盛んに行われてきました。そして江戸の終わりに京都で筝を学んだ琴の名手である葛原勾当が帰郷し活躍したことから福山琴の需要は高まり、発展していきました。
福山琴の特徴は最高級の桐乾燥材を使用して、精巧な細工が施されている点です。このため音色が美しく、耐久性にも優れています。また、外見的にも甲の木目の美しさ、竜に見立てられ作られた琴の部分、随所に施されている蒔絵は繊細で美しいものです。これらは熟練した琴職人の手作りだからこそ成せる技です。
また、琴の曲として有名な「春の海」は福山市の鞆の浦をイメージして作られたものと言われています。正月によくかかるこの曲を耳にした時には広島の海を思い浮かべて聴いてみたいものです。