卓話時間
第1499例会
2011年05月23日 (月曜日)
- タイトル :
- 福島原発事故を廻る問題点
- 卓話者 :
- 土肥博雄君
先ず健康一口メモとして、人はどの程度の放射線なら安全か、と言う問題です。我々は日常生活で毎日1μシーベルトを被曝しています。また飛行機に乗りますと一時間で1シーベルトを浴びます。都合、これで一年間約400μシーベルトになります。年間の許容量がこの5倍だと仮定すると2ミリシーベルトとなります。
さて現在放射線の人体影響の目安は広島長崎の原爆被爆者から得られたデータを根拠にしています。これは広島長崎では昭和25年から寿命調査として12万人の固定集団を60年間継続して観察してきた調査であります。表のように第一群は2.5Km以内の被爆者、第二郡は2.5~10Kmの間の被爆者、そしてコントロール郡として10Km以遠の被爆者乃至その時広島に居なかったものを規定しました。それぞれ54,000人、40,000人、26,580人の計12万人であります。この追跡調査から得られたデータでは、白血病の発生リスクはコントロールの約6倍、癌は1.5倍となります。経年的な疾患発生率は図の如くで初め白血病が増加し次いで固形癌となっています。
これらのデータからUNSCEAR報告書が作られ、ICRPの勧告書となります。
チェルノブイリ原発事故では白血病の増加は観察されず、小児の甲状腺癌が増加しました。しかし、どれだけの人がどれだけの放射線を浴びたのか、分母がはっきりしないため、データとしては採用されません。このことは東海村JCOの臨界事故の時も同じです。
さて福島の原発では二日目に水素爆発が起きています。これは燃料を入れる鞘であるジルコニウムが高温で溶解し水と反応して出来た水素が溜まり爆発したものです。つまりこの時点で炉心は溶融していたのです。
今後日本国がしなければならないのは原発内で作業している方々の今後の健康調査です。最低30年はしなければなりません。そのためには今のうちしっかりと調査し、誰がどれだけの放射線を浴びたのか記録し、計画的にフォローすることが必要です。