卓話時間
第1334例会
2007年05月21日 (月曜日)
- タイトル :
- 新会員卓話「Google Earthからみた世界の核実験場」
- 卓話者 :
- 岡本哲治君
広島大学大学院医歯薬学総合研究科 教授
私は、2000年から毎年夏に約2週間、旧ソ連(現カザフスタン共和国)のセミパラチンスク核実験場(Semipalatinsk nuclear test site)周辺の村を訪問し、住民の被曝調査と歯科治療のボランティア活動を行っています。
カザフスタン共和国はユーラシア大陸のほぼまん中にあり、1991年にソ連から独立しました(図1)。国土のほとんどはステップといわれる草原で、広さは日本の7倍もある遊牧民族の国です。また多民族国家でカザフ人、ロシア人、ドイツ人、ウイグル人など種々の人種が住んでいます。言葉は主にカザフ語とロシア語。宗教はイスラム教。首都は1997年にアルマトイからナゼルバエフ大統領の故郷、アスタナに移転しました。お金の単位はテンゲで、レートは1ドル=約148テンゲ、100テンゲ=約85円でした。(2001年)ガイドブック風に書くとこうなのでしょうが、とにかくとても広い国で、人々を観察するとほんとうに色々な人種の人たちがいました。カザフ人といわれる人の顔だちはとても日本人に似ていますが、中味はずいぶん違うような印象をうけました。カザフスタンはカスピ海の石油や天然ガスのほか、金やウランなどの天然資源が非常に豊富で、今年の4月にはウラン確保のために日本から経済産業大臣をはじめ150名の政財界人が訪問しています。
セミパラチンスク核実験場はセミパラチンスク市(人口35万人)の西、およそ100kmのところに位置し、広さはほぼ四国と同じ大きさで、ここで1949年から1991年に実験場が閉鎖されるまでの間に467回も核実験が行われたのです(図2)。住民たちには何が行われているか知らされず、実験のたびに「きのこ雲」を見たとか、地面が地震のように揺れたとか。ひどい話です。核の平和利用と称して行われた地表核実験(出来た湖の水を灌漑用水として使う)で出来た湖がいたるところにあり、地元の人たちはこれを「atomic lake」と呼んでいます(写真)。今でも通常値の100倍以上の放射線強度を示しています。この付近の住民の健康被害は深刻で、現在世界中から医療支援が行われています。わたしたちはこれまでに被爆地帯のドロン村、サラジャール村、カラウル村、モスティク村、ボラドゥリハ村、セミパラチンスク市それに対照地区としてセミパラチンスク市から南東に250km離れているコクペッティ村で大人と6~15才の子供の歯科検診ならびに歯科治療を行ってきました。興味があるかたは家内のwebsite <http://www.geocities.jp/okamoto_727/kazak.html>を訪問してください。
一方、アメリカ合衆国はネバダ核実験場、マーシャル諸島エニウェトック環礁とビキニ環礁で1127回、中国はロプノール実験場で44回、フランスはポリネシアのムルロア環礁で210回、英国はクリスマス島やマルデン島で57回の核実験を行っています。このような核実験、特に地下・地表核実験については爆発の振動が地震波として捕らえられるため地震として記録されます。これら地球上に起こった事象を簡単に知る方法として「Google Earth」があります。Google Earth は、Googleが無料で提供している全世界を衛星写真で表示する地図ソフトで、以下のweb サイトからダウンロードできます。
Google Earth(日本語版) (http://earth.google.co.jp/)。Google Earth上で「earthquake」をマークすると地球上で発生した地震や何らかの人為的爆発による地震波の震源地とその日時、振動の大きさ(マグネチュード)を知ることができます。もちろん、海外の友人宅や観光地を空から見ることもでき、世界中のレストランや観光情報はもとよりgoogleの情報とすべてリンクしているので大変便利です。このように、Google Earthは「世界の負の遺産」を含めた、すべての遺産を眺めることが出来る、非常に便利なインターネットツールですので、みなさん活用してください。