卓話時間
第1690例会
2015年12月21日 (月曜日)
- タイトル :
- ゲスト卓話「日本の通貨制度」
- 卓話者 :
- 中国財務局 総務部長 木㔟俊光様
財政・経済の基礎である我が国の「通貨」には、「貨幣」と「日本銀行券」(以下「日銀券」という。)があり、貨幣と日銀券では、いくつか異なる点がある。貨幣は、造幣局が製造し、政府が発行している。一方、日銀券は、国立印刷局が製造し、日本銀行が発行している。種類についてみると、貨幣は1円から500円までの6種類で、日銀券は千円から1万円までの4種類となっている。そして、貨幣は法律に基づき記念貨幣を発行することができるが、記念紙幣は今のところ発行できない。
貨幣の製造枚数をみると、年度により変動はあるものの、毎年度、合計で概ね10億枚程度となっている。種類ごとでは、消費税率が引き上げられた26年度には1円の製造枚数が急増している。10円については、26年度当初計画に比べ27年度当初計画では、製造枚数が倍増している。これは需要が増加したためであるが、一例として、消費税率引上げの影響で、自動販売機で使う10円の枚数が増えたことなどが挙げられる。
日銀券の製造枚数をみると、毎年度、合計で概ね30億枚程度で推移している。現在は、1万円券、5千円券、千円券の3種類を製造しており、2千円券については、製造されていない。
偽造通貨の発見状況については、平成16年には、25,858枚の偽造紙幣が発見されていたが、平成16年に改刷して以降、大幅に減少し、近年は低水準で推移している。偽造防止技術には様々なものがあるが、日銀券については、券面全体がザラザラした手触りであるほか、ホログラムや透かしが施されており、傾けたり透かしたりすることでも違いが分かる。また、両下隅に目の不自由な方が券種を識別するためのマークがあり、触ることで券種が分かるようになっている。貨幣については、500円硬貨には高度な製造技術が必要な斜めのギザが施されている。このように日本の通貨の偽造抵抗力は非常に高いものとなっている。
記念貨幣については、明治など非常に古くからあるように思われがちだが、初めて発行されたのは、昭和39年の東京オリンピックの時である。以降、発行が重ねられ、大きく次の4種類に分けることができる。①天皇陛下御在位20年等の皇室の御慶事に関するもの、②東京オリンピック等の国際的な行事に関するもの、③地方自治法施行60周年等の国家の構造、主権に関するもの、④新幹線鉄道開業50周年等の国家的プロジェクトに関するもの、である。2020年の東京オリンピック開催が決定しているが、近年のオリンピックでは、各国とも数年かけて多くの記念貨幣を発行しており、ロンドンでは約60種類発行し、リオでも30数種類の発行を予定している。東京オリンピックについては、今後の話になるが、関心を持っていただければ幸いである。