卓話時間
第1342例会
2007年07月23日 (月曜日)
- タイトル :
- 司法の今昔
- 卓話者 :
- 広島高等検察検事長 鈴木芳夫様
本日の卓話はプログラムR永田富惠君の紹介で広島高等検察検事長 鈴木芳夫氏からお話しを聞くことが出来た。会員の興味のある裁判員制度についても興味深い内容だった。
○ 国の三権(立法権,行政権,司法権)のうち,司法権を行使する機関としての「裁判所」が誕生したのは明治23年(1890年)。それまでは,三権の分立はなく,例えば江戸町奉行は,東京都知事,東京地方裁判所所長,東京地方検察庁検事正,警視総監,消防庁長官を兼ねていた。
○ 現在の「検察庁」が誕生したのは昭和22年(1947年)。それまでは裁判所の中に検事局が置かれていた。例えば広島控訴院検事局(広島高等検察庁の前身)とか広島地方裁判所検事局(広島地方検察庁の前身)と呼ばれ,法廷では検察官が裁判官と並んで上壇に座っていた。裁判官と検察官の任官資格や俸給は明治23年から現在まで基本的に同一。
○「弁護士」の名称は明治26年(1893年)からで,それまでは「代言人」。戦前の弁護士は,試験制度や修習制度が裁判官・検察官とは別で,裁判官・検察官よりも格下に見られ,司法省(法務省の前身)の監督下に置かれていた。昭和24年(1949年)に日本弁護士連合会が結成されて国の監督下を離れ,同年施行の司法試験制度の下,弁護士も裁判官・検察官と同一の試験と修習(司法修習生)を経ている。
○ 明治23年(1890年)の総人口は3990万人。これに対して法曹人口は,裁判官1531人,検察官481人,弁護士1315人の合計3327人で,法曹一人当たりの国民数は約1万2000人。裁判官一人当たりでは約2万6000人,検察官一人当たりでは約8万3000人,弁護士一人当たりでは約3万人。
平成18年(2006年)の総人口は1億2777万人。これに対して法曹人口は,裁判官2575人,検察官1591人,弁護士2万2021人の合計2万6187人で,法曹一人当たりの国民数は4880人。裁判官一人当たりでは約5万人,検察官一人当たりでは約8万人,弁護士一人当たりでは約5800人。
○ 戦前,裁判官や検察官に任官できるのは「日本臣民成人男子」に限られていた。弁護士も同様であったが,昭和8年(1933年)に弁護士法が改正され,昭和15年(1940年)に3名の女性弁護士が誕生した。初めて女性が裁判官と検察官に任官したのは昭和24年(1949年)のことで,裁判官が2名,検察官が1名。平成18年(2006年)現在,女性裁判官は474名,女性検察官は253名,女性弁護士は2859名を数える。
○ 戦前の昭和3年(1928年)から昭和18年(1943年)までの15年間,殺人,放火,強盗傷人など重罪の刑事裁判で陪審制度(12人の陪審員のみで有罪か無罪かを決める)が行われていた。全国で合計484件が陪審の評議に付され,うち80件が無罪。因みに広島では10件中1件が無罪,仙台では16件中9件が無罪。平成21年(2009年)5月までに裁判員制度(6人の裁判員が裁判官と協同して,有罪か無罪かを決め,有罪の場合は量刑を決める)が実施される予定。