卓話時間
第1253例会
2005年08月08日 (月曜日)
- タイトル :
- 原爆による被曝線量再評価
「被爆者と被曝線量」
- 卓話者 :
- 名も無き卓話者
被爆から60年たった今も被爆者は放射線の障害におびえています。被爆者が浴びた放射線の量とそれによる障害の程度については今まで多くの調査がなされてきました。結果的に人体実験となった犠牲者のデータは核兵器に対する警鐘になるだけではなく、人と放射線の関係が密接になる医療や原子力産業界における障害を防止するために貴重なデータとしても使われています。その基本となる被爆者が受けた個人放射線線量を正確に推定するために、多くの研究者が携わってきました。最新のデータとして、今年DS02(線量推定方式)が公表されます。線量推定に関わった一人として60年間の線量推定作業について紹介します。
最初の測定は投下直前にパラシュートに搭載された測定器によって行われました。しかし放射線のデータはとれませんでした。広島・長崎に原爆が投下された直後、日本人科学者ら数グループが現地を訪れ被害の調査に当たりました。特に放射線については注目されました。またアメリカ側では1947年に広島・長崎にABCC(原爆傷害調査委員会)を設置し長期にわたる被害者の調査を始めました。1956年からネバダの核実験場に日本家屋を建設し線量測定と遮蔽効果を実験的に測定し、T65D(暫定線量)として発表、以来この線量は長く利用されました。ところが1980年代に入り米国の核兵器開発途上にT65Dに対する疑問が指摘され、日米共同で再評価の作業が行われ、その結果広島の中性子線量が大きく変わり、DS86として発表されました。この仕事は主として米国のコンピュータによるモデル計算による物でした。このデータを検証するために、広島・長崎の残量放射能の測定を続けた結果、さらに修正され今回のDS02となりました。大きな相違は
広島 DS86 DS02 長崎 DS86 DS02
爆弾出力 15kt 16kt 21kt 変化なし
爆発高さ 580m 600m 503m 変化なし
爆心地 15m西に移動 2m西に移動
ガンマ線量 若干増加(10%以内) 1-2kmで10%増加
中性子線量 1-2kmで増加(最大10%) 1-2kmで10~30%減少
これらの値は今まで追跡調査をされてきた被爆者総ての個人データに反映されます。