卓話時間
第1662例会
2015年04月13日 (月曜日)
- タイトル :
- ゲスト卓話「30分でわかる日本神話の世界」
- 卓話者 :
- 株式会社 中国四国博報堂フェロー 北野尚人氏
~日本人なら知っておきたい古事記と日本書紀~
日本神話研究者 NPO法人 出雲学研究所 客員研究員
広島経済大学 経済学部メディアビジネス学科 教授
2012年は「古事記編纂1300年」、島根県で「神話博しまね」が開催されました。これをきっかけに私は日本神話に興味を持って研究を始めました。
さて、「日本神話」の定義は色々ありますが、私は、「古事記」と「日本書記」と「出雲国風土記」を中心に研究しています
まず「古事記」ですが、日本で現存する最古の書物で、712年に編纂、全3巻からなり、2012年に編纂1300年を迎えました。日本語で書かれていて、ストーリーは一つだけです。稗田阿礼が語り伝えた「帝記」「旧辞」を太安万侶がまとめたものです。
次に、「日本書紀」ですが、日本で現存する2番目に古い書物で、730年に編纂され、全30巻が中国へ向けての正史として、漢文で書かれています。ストーリーはメインの流れ以外に別の解釈も載っているのが特徴です。舎人親王がまとめました。
更に、「出雲国風土記」は、現存する5つの風土記のうち唯一の完本で、733年に完成。地名や特産物の解説など実用的な地理誌的性格を有しています。更にオオクニヌシの記述が多いのも特徴的です。
さて、まず初めに「古事記」と「日本書紀」の違いに関してご説明いたします。
まず、最初に登場する神様がちがいます。
また、日本書紀は中国の「陰陽論」の影響がみられます
更に、「古事記」では、アマテラス、ツクヨミ、スサノオはイザナギが禊によって一人で産んだことになっていますが、日本書紀ではイザナミが産んだことになっています。
日本書紀には、古事記には欠かせない「高天原」という概念がなく「黄泉の国」も登場せず、代わりに「根の国」が登場します。
今回は、最初に「日本神話」クイズ、続いて最も知名度の高いと思われる3柱の神々に関して、プロフィール、エピソード、画像、ゆかりの神社/場所をご紹介します。
まず、「日本神話」クイズ。第1問は「日本神話」で最初に登場する神様はどなたか?です。答は「古事記」ではアメノミナカヌシ(天之御中主神)、「日本書紀」ではクニノトコタチ(国常立神)。
第2問は「イザナギ」と「イザナミ」は何組目に登場された神様か?です。
「古事記」によれば、「イザナギ」「イザナミ」は12番目に登場した神様です。
日本神話の神様たちの関係は大変複雑です。元々信仰されていた神々を、古事記、日本書紀、風土記に集約させていったため、謎や矛盾点が多く存在します。特に、今回系図を作成して感じた、神様の関係が複雑な理由は以下の通りです。男女のペアでなくても一人で神様を産める。一夫多妻なのでどうしても系図が複雑に。
寿命が長いので、世代を超えた婚姻関係が存在する。古事記・日本書紀・出雲風土記で、違う解釈や記述が混在している。長い時間の中で伝承・編集され変化しているため、首尾一貫性や論理性がない。
第3問は、知名度が高いと思われる神様は?です。個人的見解のベストテンは、アマテラス、スサノオ、オオクニヌシ、イザナギ・イザナミ、コトシロヌシ、アメノウズメ、サルタヒコ、タカミムスビ・カミムスビ、ニニギ、ツクヨミです。
第4問は、エピソードで有名なものは?です。個人のベストテンは、イザナギとイザナミの国生み、イザナギの黄泉の国訪問譚、三貴子の誕生、アマテラスの天の岩戸隠れ事件、スサノオのヤマタノオロチ退治、オオクニヌシの因幡の白兎エピソード、オオクニヌシの国譲り、天孫降臨、海幸彦・山幸彦のエピソード、国引きです。
次に、最も出現頻度の高いメジャーな3柱の神々に関して解説して参ります。アマテラス(天照大御神)、スサノオ(須佐乃男命/素戔嗚尊)、オオクニヌシ(大国主神/大国主命)の3柱です。
まず、アマテラスですが、三貴子(アマテラス、ツクヨミ、スサノオ)のひとりで、太陽神です。主なエピソードとしては、スサノオとの誓約、天の岩戸隠れ、天孫降臨などが挙げられます。
ゆかりの神社や場所としては、伊勢神宮、日御碕神社、天照社があります。
次に、スサノオは三貴子のひとりで、高天原では悪役、地上界(葦原の中つ国)ではヒーローという劇的な変化のある神様であることが特徴です。
エピソードとしては、アマテラスとの誓約、高天原での乱暴狼藉、ヤマタノオロチ退治、根之堅州国でのオオクニヌシとの舅・婿顛末、息子のイソタケルとのエピソードなどがあります。
ゆかりの神社や場所は、八重垣神社、須我神社、須佐神社、日御碕神社、氷川神社、祇園神社/八坂神社などです。
三番目の神様が、オオクニヌシ(大国主神/大国主命)です。出雲神話の主役で、古事記ではスサノオの6世代後の子孫、日本書記本文ではスサノオの子、多くの呼び名があります。
エピソードは、因幡の白兎、兄神たちからの迫害、根之堅州国でのスサノオとのエピソード、スクナヒコナとの国造り、国譲りなど。
ゆかりの神社や場所は、出雲大社、厳島神社、赤猪岩神社などです。
以上、駆け足でしたが、ご清聴ありがとうございました。