卓話時間
第1613例会
2014年02月03日 (月曜日)
- タイトル :
- クラブフォーラム「国際奉仕」
- 卓話者 :
- 尾形 聡君「パラオへの国際貢献について」
国際奉仕クラブフォーラム
国際奉仕 委員長 太田 茂
国際奉仕クラブフォーラムとして、本日お話を頂く会員の方は尾形聡先生です。
尾形先生は以前からパラオにおいて国際奉仕活動をなさっておられ、身を以て国際奉仕の実際を体験なさっていらっしゃいます。今回、先生の今までのご経験をご披露頂いて、我々のこれからの国際奉仕の在り方について考えてみたいと思っております。
先生宜しくお願い致します。
「パラオへの国際貢献について」
尾形 聡
本日は会員歴が3カ月あまりと最も会員歴が短い私が皆様の前でお話しさせて頂くこと大変光栄に思います。
まず初めに本日配布されたロータリーの友の2014年2月号15頁に書いてあります川口北東RCからパラオへのゴミ収集車の寄贈の記事をご覧ください。全国の自治体からパラオへの中古のゴミ収集車の寄贈の申し出はたくさんあるのですが、輸送費の70万円やメンテナンスの費用がネックとなり立ち消えになったところをたくさん見ています。我々が尾道からゴミ収集車を送った時も大変な費用がかかりましたが、さすがRCだなと思う記事です。
パラオ共和国は広島の真南、フィリピンの東方に位置する大小約270の島々からなる海洋国家です。1914年から1945年まで日本の委任統治領であり、パラオには南洋庁が設立され日本統治の最先端の島でした。1941年にはパラオ人4700名に対し日本人17000人が居住し、現在のパラオ人は多くの人が日本人の血をひいています。日本政府は商用漁業の発展、森林開発、保健医療と生活水準の向上、リン鉱石やボーキサイトの採掘など、南洋資源の開発と経営に取り組みパラオの歴史の中で日本統治時代はパラオが最も豊かな時代でした。 パラオは1994年にアメリカから独立し、公用語は英語、パラオ語で、75歳以上は日本語は堪能です。現在人口は約2万人で小・高校生が約4000人、中国・フィリピン・台湾からの出稼ぎ労働者が約1万人、残りの 大人6000人のうちの約半数が糖尿病で、 平均寿命は67.75歳という統計があります。パラオの海はとてもきれいで、海岸はどこに行ってもコバルトブルーとエメラルドグリーンの海岸線、海の中の水は空気の様で、日本ではなかなか見れない色とりどりの魚群が空中に浮かんでいるように見えます。伝統文化や戦時中の遺品も残されており、幅広い年齢層の日本人が毎年パラオを訪れています。
パラオでは、日本人が設立したDolphins Pacificというイルカの保護を行うNPO法人が、環境教育活動、イルカ介在活動、環境保護活動を行っており、日本のさまざま教育機関から研修を受け入れていますので、学校関係者の方は興味があればご相談ください。
パラオでは日本軍が作った幹線道路の補修工事や大規模な橋の建設など多くの日本の税金が使われています。当初私はこれに批判的でしたが、結局はそのお金は日本企業に流れるため、日本の経済発展にも貢献し世界での地位向上にも役立っていると感じるようになりました。しかしながら現地の人の役に立っていない物の提供やや単発の設備の押し付けなど無駄も多く、継続可能でパラオ人が本当に必要としている援助をしていくことが大切だと思います。パラオ政府の予算も限られており、パラオの予算を圧迫するような事業はするべきではありません。
こういった観点で私はNPO法人日本パラオ協会からプロジェクトマネージャーとして日本国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業(草の根協力支援型)に約1年かけて応募し、2005年11月から3年間(滞在は最初4カ月、2年目と3年目は10日間ずつ)「パラオ共和国での学校検診実施のための技術協力 」という国家プロジェクトを行ってきました。対象者は小学生・高校生約4000人で、予算は約400万円です。米国式のフィート、インチ、ポンドなどが浸透しているため、日本の資機材はそのままでは全く役に立たず、現地で資機材を購入したり、単位や表示を研究して米国表示に変更して道具を使いました。
パラオでの活動では、
● 現地の人は10分働いて50分休みます。
● 日本で1週間でできることはパラオでは1カ月以上かかります。
● 時計は持たず、メモも取りません。8時59分まで8時です。
● いろんなものを買ってもパラオ人はお金は払いません。すべてこちらから寄付または前払いの金銭を要求されます。
● 寄付したものは見つけた人が家に持って帰ります。
● 担当者が帰国すると元通りになってしまいます。
● パラオでの活動は8割がた腹が立ちますが、5回に1回くらい本当にうれしいことがあります。
● こんなにいい加減でも人間は生きていけるのだと日本に帰ってから人間が一回りも二回りも大きくなります。
という文化の違いにとまどい、ただただ一生懸命やるだけでした。
パラオでの検診結果ですが、日本と比較し10倍以上の異常が子供にみつかりました。学校給食はハンバーガーやコーンビーフなど輸入品の脂たっぷりの軽食ばかりで、パラオで取れる野菜や安価な魚はほとんど使われていません。今後は個人的に続けている検尿試験紙や透析患者への消耗品の支援のほか、このような状態を改善するためにパラオ流アレンジの学校給食のメニュー開発 や学校での食育指導、学生の海外ボランティア体験事業などを現地のロータリークラブや政府、日本のNPOなどと一緒に手掛けていきたいと考えています。
ご清聴ありがとうございました。