卓話時間
第1587例会
2013年06月17日 (月曜日)
- タイトル :
- 新会員卓話「自己紹介」
- 卓話者 :
- 藤原佐枝子君
ー広島に生まれて-
私は、広島生まれの広島育ちで、身近に原爆被爆者が多く、かえって被爆者を意識していませんでしたが、いつのまにか被爆者にかかわる仕事をずっとしてきました。
医学部での研修を終えた後、放射線影響研究所(放影研)に勤務し、昨年の4月から、広島原爆障害対策協議会 健康管理・増進センター(原対協)に勤めています。
放影研では、原爆放射線の人体への影響研究や骨粗鬆症の疫学研究を続けてきました。疫学研究というのは、病気の頻度や、病気になりやすい危険因子を解明して、それを予防に生かそうという研究です。放影研は、原爆放射線の人体への影響を調べるために、原爆被爆者11万人の方を追跡調査しています。そのうちの2万人の方には、広島長崎の放影研に2年に1回健診に来ていただき、被ばくの影響研究にご協力いただいています。私は、健診に携わりながら、放射線の副甲状腺、甲状腺の病気への影響、がんへの影響などの研究をしてきました。また、放射線が加齢に関連する疾患に影響するかということも1つの課題で、骨粗鬆症の疫学研究も始めました。私たちの研究では、放射線が骨粗鬆症に影響するという結果は得られませんでしたが、骨粗鬆症の診断のための骨密度を測定して長期に追跡しているところは、日本だけではなく、アジアにもほとんどなく、広島から得られた骨粗鬆症・骨折の疫学研究は、貴重な研究となっています。最近では、WHOのワーキンググループが、世界中どこでも、だれでも使える、その人の将来の骨折するリスクを計算するツール作成したのですが、そのツール作成にも関わりました。
放影研での研究から得られた知識を被爆者や広島住民の方々に、少しでも還元したく思い、昨年、現在の勤務先に移動しました。原対協では、被爆者や広島住民の方々に対して、健康診断やがん検診をして、病気の早期発見に努めています。残念ながら、日本では、がん検診受診率が20%に満たず、心疾患、脳血管疾患の予防のために始まった特定健診(メタボ健診)の受診率は、広島市は全国で最下位です。がん検診は、がんを早期発見し、検診を受けることで死亡率が低下するという証拠のある方法で実施されています。メタボ健診は、糖尿病などの疾患になる前段階の人をみつけ、食事や運動の指導で生活習慣を改善していただき、疾患を予防しようとするものです。今後とも、これらの検診の受診率向上に努め、少しでも、原爆被爆者や広島市民の健康管理のお役にたてればと思っています。