卓話時間
第1438例会
2009年12月07日 (月曜日)
- タイトル :
- 会員リレー卓話
新会員卓話「医学研究と国際貢献」
- 卓話者 :
- 高田 隆君
はじめに
7月に入会させていただき,ロータリークラブの4つの誓いを暗唱し,ロータリーソングを歌詞なしで歌える前に,はや年末をむかえることになりました.この間,会員の皆様には家族ともども快くお受入れいただき,感謝申し上げます.薬師寺 山田法胤管主の格調高いお話があった記念例会直後にさせていただく卓話で大変心もとないところですが,プログラム担当の吉川会員より新会員卓話は自分を知ってもらうためのいわば自己紹介なので,気軽に話をすれば良いと言うお言葉に励まされ,貴重なお時間をいただきましてつたないお話をさせていただきます.
花のニッパチと運命の出会い
私は昭和28年に神戸に生まれました.世間では昭和28年生まれを「花のニッパチ」と呼びます.これは大相撲でまだ日本人力士全盛の頃に,昭和28年生まれの北の湖,若乃花(第2代),麒麟児等が活躍したことにちなんだ言葉のようで,この年に生まれた者は,「花のニッパチ」に何か肯定的なものを感じます.ウィキペディアには「1953年に国立大学を卒業した学生は,1949年の学制改革によって旧制高等学校と新制大学の両方を経験しており,さらに廃校となった外地の大学の学生も転入してきたため,官僚や経済界などで多種多様な人材を輩出した学年として知られている.」との記載もあり,これには該当しませんが,「花のニッパチ」を何かしら誇らしく思わせます.ちなみに,昭和28年生まれの著名人には稲垣潤一,落合博満,角川 博,研ナオコ,小林幸子,関根 勤,竹下景子,三田村邦彦,松平 健,山下達郎等がいます.広島中央RCにも,富里会員と村本会員のお二人がいらっしゃいますので,「花のニッパチ」つながりで懇意にしていただき,力を合わせて中央RCの発展に貢献できればと願っております.
昭和47年に広島大学歯学部に入学し,以降現在に至るまでずっと広島大学に在籍させていただいております.昭和53年に大学を卒業すると同時に大学院に進学し,人体病理学を研修させていただいたのが,当時,田原栄一先生の主宰される第一病理学教室でした.ほぼ同時期に同教室に入局されたのが嶋本先生で,そのご縁から今日私が広島中央RCに入会させていただいたことを考えると,まさしく運命の出会いと感慨深いものがあります.田原先生には病理学の基本と研究の方向性を教えていただくとともに,研究室のあり方を勉強させていただきました.現在,30名近い教員や学生に囲まれて教育研究をさせていただいておりますが,田原先生の研究室と重ねて若き日々を懐かしく思い出しております.なお,RC入会に当たっては,薬学部長の太田先生にもご推薦をいただきましたが,本年7月6日に迫田会長から正式の入会をお許しいただいた後に,嶋本,太田両会員が「ニヤッ!」とされたのが,今でも心のどこかに引っかかっております(smile).なお,学生時代の妻との運命的な出会いにつきましては,広島中央ロータリークラブ月報7月号に掲載していただいておりますので,そちらをご覧いただければと思います.
歯科医学教育・研究を通した社会への貢献
1.教室を通した社会への貢献
学部教育では難解な病理学の内容をできるだけ臨床との関連を示しながらわかりやすく解説するとともに,大学院生には病理学的研究を通して問題解決型思考の育成をはかっています.また,教室の教員には,教育者,研究者,病理医として,高いレベルでバランスをとりながら大成できるように,スタッフ教育を行っています.
2.研究を通した社会への貢献
教室では,歯周病や齲蝕などを対象とした歯科病理学的研究と,腫瘍や嚢胞などを対象とした外科病理学的研究を歯学部における病理学的研究の両輪と位置付け,新しい診断法や治療法の開発を目指したいわゆるtranslationalな研究を展開しています.新会員卓話では歯周組織再生に関する最近の研究のうち,エナメルタンパクXを用いた新しい組織再生療法開発研究「プロジェクトX」について紹介をさせていただきました(smile).
3.病理診断を通した臨床への貢献
病理学は臨床医学と不可分の関係にありますが,とりわけ病理診断は臨床の一部を構成しています.私達も広島大学病院における高品質な医療を供給するためのチーム医療の一員として,病理診断に参加しています.また,顎口腔領域の病理専門医としてコンサルテーション機関として登録され,毎日のように全国から送られてくる難症例の問い合わせに応じています.
以上の活動の詳細は教室のホームページ(http://home.hiroshima-u.ac.jp/opath/oralpathol.htm)に掲載しておりますので,お時間がありましたら是非お立ち寄りください.
国際貢献
国際貢献の一環として,広島大学歯学部ではカンボジア歯科医療支援に関わらせていただいております.カンボジアでは1970年から約20年間続いた内戦で,知識層の大虐殺が行われ,歯科医師も全土で30名くらいまでに減少したそうです.1991年のパリ和平協定後,約20年を経た現在でも,教員の不足と施設の未整備で歯科医療に携わる人材育成はままならず,1500万人の人口に対して歯科医師数が300名くらいまで回復した程度です.これは5万人に対して歯科医師が1名のみ(三次市に一人か二人の歯科医師しかいない!)という計算になります.ちなみに日本では1350人に歯科医師1名です.このようにカンボジアでは歯科衛生士や技工士も含めて歯科医療関係者の絶対的不足が社会問題となっています.そこで,広島大学歯学部では,カンボジアで唯一歯科医師を輩出している王立健康科学大学歯学部と学術交流協定を締結し,同国における歯科医療関係者の人材育成に貢献したいと思っています.このような中長期的な支援としての人材育成に加えて,緊急の対応としての口腔衛生指導普及のため,ササーダム地区(アンコールワットで有名なシェムリアップの近く)の小学校における検診を行っています.わが国ではほとんど見ることのない多発性の齲蝕(ムシ歯)や歯周疾患を発症している児童が数多くいます.本年9月の訪問では,歯科医師,医師,歯学部の学生,広島経済大学の学生に加えて,広島南RCからも井内,和泉,原田各会員にもご参加をいただき,総勢40名を越える歯科医療支援チームを結成し歯科検診ならびに口腔保健指導を行うことができました.新会員卓話の直後に,広島中央RCの吉清会員からNPO法人千羽鶴未来プロジェクト(http:www.mirai.npo-jp.net/)のお話をうかがい感銘を受けるとともに,千羽鶴の再生紙から作ったノートをその意味を添えて提供していただけるとのことで,子供たちの喜ぶ顔とノートに込められた意味を学ぶ姿が浮かんで参りました.広島大学歯学部はアジアに根差した歯科医学,口腔健康科学の教育研究国際拠点をポジショニングと定め,急速なグローバル化に対応可能な教育改革を国際連携を積極的に進めています.引き続き,広島大学歯学部に対する広島中央RCの皆様のご理解とご支援を賜われますようお願いいたします.