卓話時間
第1434例会
2009年10月26日 (月曜日)
- タイトル :
- 職場訪問例会をお迎えして
- 卓話者 :
- 広島市総合リハビリテーションセンター
リハビリテーション病院
院長 村上 恒二(むらかみ つねじ)君
このたび広島中央ロータリークラブのメンバーの皆様を職場訪問としてお迎えすることができましたことを大変光栄に思っております。当日は十分に意を尽くしたご案内が出来たかどうか心配ですが、皆様の今後の参考になれば幸いです。以下、当日の補足として病院及び回復期リハビリテーションについて紹介させていただきます。
高齢化社会を迎え高齢者の増加と生活習慣病などによる脳血管障害の増加や交通事故、労災事故等に伴う脊髄損傷などにより、リハビリテーションに対する社会的ニーズは増大しています。このような医学的リハビリテーションに加え、日常生活訓練、職場復帰のための就労適応訓練などを行う社会的リハビリテーションを組み合わせ、中途障害者などの社会復帰を支援するため、広島市総合リハビリテーションセンターは平成20年4月1日に広島市立病院の一つとして新しく開院いたしました。
総合リハビリテーションセンターは、社会復帰を支援する3つの輪から構成されています。一つはリハビリの総合相談部門としての総合相談室(身体障害者更生相談所)です。利用者や家族が、専門的なリハビリテーション活動に意欲的に取り組まれ、社会活動への移行がスムースに行えるよう、専門的スタッフが、地域の医療・保健・福祉機関と連携し、協同して支援します。また、福祉関係の認定業務あるいは車いす、電動車いすの支給、義足装着や更新などの福祉業務を行っています。
二つ目は社会への復帰を支援する施設としての自立訓練施設です。障害者が家庭や職場、地域で生活するため、障害(視覚障害者を含む)の克服・社会的自立促進のための日常生活訓練活動・IT訓練・歩行訓練・職業前訓練などの実施やコミュニケーション手段の習得、余暇活動技術の習得など生活スタイルの訓練を行います。定員は60名ですが50名については、通所による訓練が困難な方の訓練のため、入所による入浴、排泄または食事の支援を行います。さらに5名程度を対象に介護者の疾病等により一時的に居宅生活が困難になった場合には、短期入所による介護を行うことにしています。
三番目の施設は、回復期リハビリテーション病院です。回復期リハビリテーションによって機能改善が見込まれる患者さんを、急性期病院からの紹介で受け入れ、障害の改善、日常生活機能の向上のため理学療法、作業療法、言語聴覚療法など専門的リハビリテーションを行います。平成20年4月1日に開院し、回復期リハビリテーション病棟100床を開設しています。
回復期リハビリテーション病院は、患者さんの日常生活動作の向上による寝たきり防止と家庭復帰を目的とし集中的にリハビリを行う病棟として、特定入院料に規定された病棟です。わかりやすく言えば、長嶋元巨人軍監督やサッカーJリーグのオシム監督が入院してリハビリを行った病院が回復期リハビリテーション病院です。現在では人口10万人に50床を目標に都道府県に設置されています。回復期リハビリテーション病院は、入院の対象疾患が特定されており、さらに発症から入院までの日数や入院後の入院可能な日数が制限されています。疾患名としては、脳血管疾患(脳梗塞、脳出血、心原性脳塞栓、くも膜下出血)、脊髄損傷、頭部外傷による脳挫傷、クモ膜下出血のシャント手術後、脳腫瘍、脳炎、脊髄炎、多発性硬化症、高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、脊椎脊髄手術後、大腿骨頚部骨折、多発骨折または術後、外科手術後や肺炎後の臥床による廃用症候群などと疾患が細かく規定されています。入院までの日数は、発症後または手術後2カ月以内の患者さんで、入院上限日数も脳血管疾患、脊髄損傷等では150日、高次脳機能障害、重度の頚髄損傷等では180日、脊髄、骨折、廃用症候群等では90日などと決められています。入院患者さんを最近の半年間でみますと、脳血管障害を含め脳疾患が55%、神経難病16%、大腿骨骨折、頚椎骨折11%、脊髄損傷10%、外科手術後、肺炎後の臥床による廃用症候群(動かないことによる心臓、肺、筋肉の衰え)8%の患者さんがリハビリを行っておられます。同時期に退院した患者さんは、自宅に帰られた方が63%, 有料老人ホーム等に6%、老健施設3%、病院への転院28%でした(2009.4~9)。患者さんは、広島市内および県内全域の急性期病院からの入院がほとんどをしめますが、広島県からの単身赴任者、ご家族が広島におられる方、出張中に事故等にあわれた方など急性期治療を終えて九州、四国、中国地方、大阪、東京、ソウル、シンガポール、カナダ等から入院してこられています。
さて、私たちの病院は広島市内の城南通りから高速4号線を抜けて、西風新都にむけて走り、安佐南区伴南の閑静な場所にあり、市内から20分前後という好立地に位置しています。周辺が住宅地という立地条件ではありますが、病院は一辺200m、総敷地面積3.9haという広大な敷地の中にあり、多くの木々や花が2階建ての美しい建物とマッチし、さらに周辺の山々へと広がる四季折々の変化が見事な素晴らしい環境の中にあります。このような良い環境に恵まれ、リハビリ室での訓練、病棟での訓練、ADL室での訓練、屋外での歩行訓練、障害者スポーツを取り入れた訓練、園芸療法など多彩なリハビリが可能となっています。
リハビリテーション病院には、リハビリテーション専門医4名、神経内科専門医3名、脳神経外科専門医1名、整形外科専門医1名、補綴歯科専門医1名の10名の常勤医師がいます。ほかには循環器内科、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、泌尿器科の非常勤医師に診療援助をお願いしています。看護科には総勢72名の看護師、看護補助者が勤務し、リハビリテーション科には理学療法士25名、作業療法士20名、言語聴覚士7名、臨床心理士1名の総勢53名のスタッフがリハビリにあたります。ほかには、薬剤師、検査技師、放射線技師、管理栄養士、歯科衛生士などが勤務しています。
回復期リハビリでは、日中は寝たままにさせない、三時間以上の歩行や日常生活動作の自立を目指したリハビリの実施、トイレでの排泄、食堂での食事、浴槽での入浴、良好な睡眠を十分にとる規則正しい生活を毎日行うように支援します。そして、患者さんには依存性を持たせないよう、やさしく自立を促すことがポイントであります。まさにチーム医療の質が大きく問われるところであります。 病院は、かっては専門単科の複合体でしたが、ここでは専門単科が一つの有機体として機能することが求められています。特に、リハビリテーション病院は有機体としてのチーム医療が、効率的に機能することが求められ、新しい価値観の萌芽を感じます。
利用者の皆様が、住み慣れた地域で再び歩いたり話ができるようになり、いきいきと心豊かな生活ができるよう良質で信頼される総合的なリハビリテーションサービスを提供したいと思います。