卓話時間
第1426例会
2009年08月10日 (月曜日)
- タイトル :
- 会員卓話「広島市のエコチャレンジ」
- 卓話者 :
- 広島市環境局 局長渋沢裕二郎氏
長期プロジェクト検討委員会のエコチャレンジに関連して、国家レベルから行政「広島市のエコチャレンジ」を分かりやすく聞くことができた。今後も広島市と協議の上、中央RCのエコチャレンジを推進して行くようだ。
広島市の地球温暖化対策について
地球温暖化とわたしたちのくらし
地球温暖化問題は、今や人類共通の喫緊の課題となっています。
地球温暖化は、なぜ起きるのでしょう。
今起きている地球温暖化の原因として、世界の科学者たちが出した答えは、二酸化炭素などの温室効果ガスです。温室効果ガスには、地球の外へ出ていく熱を吸収する働きがあります。
産業革命以前と比べると、大気中の二酸化炭素の濃度は35%も増えています。これまでの100年間で世界平均気温は0.74度上昇しました。それが、これまでどおりの経済成長を続けていくと、今後100年間で最大6.4度も上昇すると言われているのです。
現在すでに、地球温暖化の影響は色々な場面に現れています。ヒマラヤの氷河が融けたり、海面が上昇して太平洋のマーシャル諸島では国土の浸食が進んだりしています。身近なところでは、厳島神社の浸水の回数が増えています。異常気象や感染症、農作物への影響などもすでに出始めています。このまま地球温暖化が進み、6.4度も気温が上昇してしまったら、地球はどうなってしまうのでしょうか。
二酸化炭素は、石油や石炭などを燃やす時に排出されます。今の私たちの豊かなくらしや経済活動は、こうした化石エネルギーに支えられています。ですから、温室効果ガスを減らすということは、私たちのくらしや経済活動を見直すということでもあります。
世界全体の二酸化炭素の排出量(2005年)を見ると、日本の排出量は、アメリカ、中国、ロシアに次いで世界第4位です。1人当たりの排出量を比べてみると、先進国は発展途上国の数倍も排出しています。日本を含む先進国には、相当の責任があると言えるでしょう。
では、広島市の状況を見てみましょう。
広島市の排出量(2004年度)は、約630万トンで、統計の取り方にもよりますが、1990年度以来概ね横ばいで推移しています。しかし、内訳をよく見ると、家庭やオフィスなどから出る二酸化炭素は大幅に増えているのです。
カーボンマイナス70
先ほど述べたように、このまま化石エネルギーに頼って経済成長を続けていくと、世界平均気温は今後100年間で最大で6.4度も上昇してしまいます。
世界の科学者たちは、世界平均気温が2~3℃以上上昇すると、地球上のすべての地域でマイナスの影響が出るだろうと予測しています。
逆に、世界平均気温の上昇を2℃以内に抑えるためには、2050年には世界全体の温室効果ガスを半減すること、先進国にはそれ以上の削減が必要だというのが、おおよそ世界の共通認識になりつつあります。
広島市では、こうした状況をふまえ、去年2月、「カーボンマイナス70(セブンティと読みます。)」という長期目標を掲げました。2050年に温室効果ガス排出量を1990年度比で70%削減するという、大変大きな目標です。
こんな大幅な削減目標は、これまでのやり方の延長ではとても達成できません。
そこで、これからの地球温暖化対策の方向性を示す長期ビジョンを、今つくっているところです。その長期ビジョン、まだ案ですけども、その内容を少し紹介しましょう。
わたしたちの家庭から出る温室効果ガスを70%減らすことを考えてみます。
長期ビジョンの試算では、今使っているエネルギーをおよそ半分にすること、使うエネルギーのうち4割程度は太陽光などの再生可能エネルギーにすること、それから電気の原単位を7割程度下げること。この3つの条件をすべて満たす必要があります。
そのためには、高断熱の省エネ住宅を普及させ、古い家電製品をトップランナーの省エネ家電に取り替えていかないといけません。太陽光発電は戸建住宅のほぼすべてまで普及させないといけないでしょう。まだまだこれでも足りません。市民一人ひとりがくらし方を見直したり、伝統的な知恵を活かしたりすることも必要です。
これはほんの一例です。2050年というとずっと遠い未来の話のようですが、こういうことを実際に実現していこうと思ったら、今からどんどん対策を打っておかないと、とても間に合わないのです。
カーボンマイナス70の達成に向けた広島市の取組
次に、この「カーボンマイナス70」の達成に向けて、広島市が今行っている取組を紹介しましょう。
広島市では、平成20年度を「温暖化対策行動元年」と位置付けて、集中的に取組を行っているところです。
大きなものとしては、今年3月に「広島市地球温暖化対策等の推進に関する条例」という、新しい条例を制定しました。これは、事業活動、自動車、建築物、緑化などの5つの制度でできており、一定規模以上の事業者のみなさんに、計画書や報告書を提出してもらうものです。この条例は、これから事業者のみなさんの温暖化対策を進めていく上で、基礎になるものでしょう。
それから、市民主体の取組については、インターネットを活用したエコポイント制度や、学校に二酸化炭素の濃度が分かる表示板を設置する事業、全町内会を対象にしたエコ講座の開催などに取り組んでいます。
事業者と行政とが連携した取組については、エコパートナー制度やエコ事業所の認定制度のほか、路面電車や自転車などを活かした交通関係の事業にもたくさん取り組んでいます。なるべく自動車の利用を控えてもらう「マイカー乗るまぁデー」は、去年から、毎月2日、12日、22日に拡大して実施しています。
それから、住宅への太陽光発電の設置や断熱化に対する補助、運送事業者に対する低公害トラックの補助なども始めていますし、市役所自らの低炭素化プロジェクトも実施中です。
さらに、リーディングプロジェクトとして、市民が参画する独自の排出量取引や、カーボンバンク(仮称)といった炭素に価格をつけていく取組、水素自動車を中心としたプロジェクトも計画しています。