卓話時間
第1404例会
2009年02月09日 (月曜日)
- タイトル :
- 日本の防衛と自衛隊
- 卓話者 :
- 第13旅団長 陸将補 平野治征様
中国五県の災害派遣民政支援等を担当しています。
私は生意気に髭を生やしています。15年前にパキスタンの日本大使館に防衛駐在官として3年ほど勤務していました。パキスタンはイスラムの国で髭は男にとって力の象徴なので、我々外国人も髭を生やしていた方が仕事がやりやすいので生やしていました。帰国しましたが愛着が出てそのまま上司の許可を得てそのまま生やしています。非常に厳しい条件があります。自分の行動言動顔には責任を持ちたいと考えています。家族には不評ですが、指揮統率上剃れません。ご容赦願います。
1.はじめに
東アジア地域に於ける安全保障システムは、日米、日韓、中露等の二国間同盟主体のシステムであり、この上にアセアン(ASEAN)、アセアン地域フォーラム(ARF)等の緩やかな地域連合機構が存在する。東アジア地域は、統合指向の強い欧州正面と異なり、国家間の主権意識が強く、複雑に入り組む利害関係が存在し、多くの潜在的危険を孕んでいる地域といえる。
また、世界の強国として依然影響力がある米国は、現在その戦略重点を中東地域に置きつつも、日米同盟をアジア・太平洋地域における安全保障政策の要石と認識しており、中国や北朝鮮への積極的関与政策により本地域の平和と安定を図るべく努力を傾注している。
東アジア地域における安全保障は、見通し得る将来、現在の二国間同盟主体のシステムに協調的連合体の設立を目指しつつ、各国の信頼醸成措置(CBM)を講じるとともに、最終的には東アジア共同体構想のようなシステムが実現すればベターである。
2.日本の防衛と自衛隊
(1)我が国周辺の軍事情勢と我が国の安全保障に影響を与える各種事態
我が国周辺の軍事情勢は依然として予断を許さない状況にある。朝鮮半島では100万の軍隊が対峙し、中台間の緊張も低下している状態とは言えない。特に、中国軍のミサイル及び海・空軍の量・質にわたる増強と活動範囲の広がりは注目に値する。
日本の安全保障に影響を及ぼす各種事態は、朝鮮半島有事や中台軍事衝突が代表的であるが、北朝鮮の核・ミサイル開発、テロ攻撃特に大量破壊兵器を使用するテロ、サイバー攻撃、新型インフルエンザの発生等が重大な影響を及ぼすことになろう。また、ソマリア沖やマラッカ海峡の海賊問題、南沙諸島を巡る軍事衝突、インド・パキスタン紛争等の生起は日本の海上連絡線(シーレーン)に影響を及ぼす事態である。
(2)日本の防衛
ア.基本政策
国防の基本方針は、昭和32年(1957)に定められた「国防の基本方針」によると、①国際協調など平和への努力、②国民生活の安定等による安全保障基盤の確立、③効率的な防衛力の整備、④日米安全保障体制の四項目である。
また、その他の基本政策として、専守防衛、軍事大国にならない、非核三原則、文民統制があげられる。
イ.防衛計画の大綱
防衛計画の大綱は、我が国の防衛力のあり方やその具体的な整備目標等、我が国の防衛力の整備、維持、運用に関する基本的な指針を示したものであり、中期防衛力整備計画(5ヶ年毎の防衛力整備計画)、年度予算を策定するための基本となるものである。
最初の大綱は、昭和51年(1976)に制定され、その後、冷戦構造崩壊に伴い、平成7年(1995)に2度目の大綱が策定された。現大綱は、2001年9月のニューヨーク同時多発テロ以降、新たな脅威や多様な事態に対応するために、我が国を取り巻く新たな安全保障環境の下で我が国及び国際社会の平和と安全を確保するために、平成16年(2004)(16大綱)に策定されたものである。
16大綱は、我が国の安全保障の基本方針として、2つの目標・3つのアプローチが定められた。2つの目標とは、①脅威の未然防止と排除・被害の最小化、及び②国際的な安全保障環境を改善し我が国への脅威の波及を阻止することである。この2つの目標を達成するため、①我が国自身の努力、②同盟国との協力、及び③国際社会との協力という3つのアプローチが定められた。これに、若年人口の減少や厳しい経済情勢等を考慮し、新たな防衛力は、対処能力を重視し、防衛力を多機能で弾力的、且つ実効性のあるものとされた。
大綱に基づく新たな体制として陸上自衛隊は、5個方面隊の隷下に9個師団、6個旅団を保持するとともに、中央即応師団を新編した。また、陸上自衛隊の部隊配置は、地理的重点を北から南、東から西へと変更し、日本海側及び南西諸島正面の配備を強化するとともに、重装備をさらに効率化しつつ、各種機能を充実し防衛力の質的変換を図っている。
現大綱が策定されてから4年余りが経過したが、国際平和協力活動が自衛隊の本来任務となりイラクやインド洋での実績を積んできたこと、日本周辺での安全保障環境の変化、防衛省改革の必要性等を踏まえ、今後活発な議論がなされ、本年末までには新たな大綱が策定される予定である。
3.結言
昨今は、「いつ、どこで、何が起こるかの予測が困難な時代」であり、言い換えれば、「いつ、どこで、何が起こっても不思議でない時代」でもある。このような中にあって、各種事態に直ちに対応できる即応性と柔軟性、そして与えられた任務を完遂するための継戦力の保持が極めて重要である。
我々自衛官は、その使命と任務を自覚し、心身を鍛え、技能を錬磨し、一旦緩急あれば、身の危険を顧みず任務遂行に邁進することが求められている。
引き続き、皆様のご支援・ご協力、そしてご指導・ご鞭撻をお願い申し上げます。