卓話時間
第1315例会
2006年12月04日 (月曜日)
- タイトル :
- 「犯罪被害者支援の現状と課題」
- 卓話者 :
- 広島被害者支援センター 理事長 山本一隆氏
(株)中国新聞社 取締役副社長(広島東RC会員)
職業柄、色々なNPOやボランティア活動に関わる機会に恵まれております。その中で、かなりエネルギーを必要としていますのが、(社)広島被害者支援センターとのかかわりです。
センターにつきましては資料にもあります通り平成16年2月に広島県警からの要請により任意の団体として設立し、昨年4月に社団法人として承認され現在、様々な支援活動を続けております。
本日は、センターの役割より日本における犯罪被害者支援の実態について皆様にご理解をいただくためにお話しをしようと思い、やってまいりました。
皆様の中で犯罪被害者や支援の実態にご関心のある方は少ないと思われます。出来ることなら犯罪被害に関わりたくないのが当たり前のことと思います。
ここで言う犯罪被害者とは幅広く、殺人をはじめ傷害、盗難、金融被害、セクハラなどの精神的被害、最近では悪質な酒酔い運転による交通事故被害も含まれます。
さてそこで、一つの例として、今あなたもしくは家族が強盗傷害の被害者になったとします。加害者と格闘になり双方が重症を負うか被害者が死亡したとします。容疑者は逮捕されますが重症のため警察病院で治療を受け、その後も取り調べを受けられるようになるまで“生活”が保証されます。一方、被害者の方はどうでしょう。死亡した場合、司法解剖された後、遺体引き取りの運搬費用をはじめ、その後の予期せぬ葬儀費用など、すべて被害者遺族の肩にかかってきます。そのご加害者の裁判が終わり、刑が確定します。さらに民事裁判で損害賠償が確定してもほとんどの場合、加害者に支払能力はありません。泣き寝入りがほとんどと言っても過言ではありません。
次に一般的に万一犯罪被害に遭ったらまず(1)身体的、精神的被害に陥る。(2)仕事の継続が困難、医療費の発生、介護の発生。(3)経済的被害の発生、とつながり再び(1)へと戻る悪循環になります。
この精神的被害と言うのが最も厄介で、一般的にPTSD(外傷後ストレス傷害)に陥ります。これは心に強いショックを受けたあとで心の方から色んな反応が起こってきて身体も心も人間として日常生活がうまくいかない状態となります。
では、精神的被害の具体的な内容は、
(1)犯罪による直接的な被害 ーー 次被害
(2)法的制度の不備による被害 ーー 少年法の問題など。実際に少年犯罪の再犯罪率は非常に高い。平成12年の統計では強盗、強姦などの凶悪少年犯罪105人のうち再犯は52人にのぼっております。
(3)マスコミの被害
・誤報やマスコミ集中によるメディアスクラム
・被害者が許可していない写真や映像の掲載
・インターネットでの間違った情報
・報道してほしくない報道など
(4)周囲の人たちの偏見、風評による被害
それでは、犯罪被害者に対してどんな対策があるのか。
もし、身近に被害者や遺族の方がおられる場合、特別視するのではなく出来るだけ今まで通り接することがもっとも大切です。
被害者は必ず自分との戦いに入り込みます。まず、笑いを忘れ、好きだったものも食べられない。
下を向いた被害者をいかに上を向けさせることが出来るかが重要。平均的に普通の生活に戻る、立ち直るまで最低でも3年かかると言われています。
一方、経済的支援の実態は・・・
[日本の場合]加害者と被害者への支出の格差が大きい。
・加害者への支出は刑務所費用や治療費用など合わせて年間466億円かけられている。
・一方、被害者に対しては犯罪被害者給付金などで、平成12年に5億7千万円、平成15年でやつと11億円になったが、年間1500人の被害者で割ると1人当たり最高でもわずか300万円にしかならない。
[諸外国の場合]
・ドイツー犯罪被害による被害者の医療費はすべて国家が負担
・イギリスー最大一人1億円の保障
・フランスー職業に応じて年収の70-80%を年金で保障
・アメリカー「犯罪被害者法」制定は1984年。民間援助団体は全米で2006年現在1万を超える。
(日本の場合はようやく一昨年2004年に犯罪被害者等基本法が成立し、翌2005年から施行。
「広島被害者被害支援センターの役割」
そこで私たちのセンターはこうした世界的に遅れている被害者の対策のために設立されたもので、現在、15人の理事やボランティアの正会員(73人)賛助会員(2059人)に支えられ、22人の支援活動員を中心に活動。電話相談をはじめ被害者や家族の人たちへの直接支援、さらに全県民への支援の訴えを幅広く行っています。ロータリークラブの皆様のご理解とご支援をお願いし卓話を終わります。どうもありがとうございました。 以上