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第1478例会

2010年12月06日 (月曜日)

タイトル :
新会員卓話
「事業として捉えた高齢者福祉について」
卓話者 :
澁谷紀子君

澁谷紀子君と紹介者の田原榮一君

いよいよ高齢化社会の到来
 我が国では、高齢者社会の到来と言われて久しくなります。
街中を見渡しても、所謂「老人ホーム」の看板や、介護タクシーを見かける機会も増えました。雑誌などでも、高級リゾートホテルの様なホームの広告も目にしますし、大手企業の高齢者福祉事業への参入も珍しい事ではなくなりました。
しかし、実際に家族などが入所された機会などが無い方には、どの様なサービスが受けられるのか、またどんな種類の施設があるのかなどと言う事は、大変わかりにくいのではないかと思います。
まず、日本は本当にどれくらい高齢化が進んでいるのかという事を確認してみます。2010年のWHO加盟国の統計です、日本では高齢者というと65歳以上の事ですが、世界的には60歳以上の統計になります。それだけでも高齢化が進んでいるという証になると思いますが、単独1位で29%です。反対に15歳以下の割合は、13%で最下位です。人口の多さでいうと、日本は10番目になりますが、60歳以上の割合は上位10カ国の中でも断トツに多くなっています。平均余命、ここでは所謂平均寿命と言われている0歳の平均余命を挙げていますが、世界平均の68歳に対して83歳とやはりトップになります。内戦などの国内事情もありますが、アフガニスタンは、平均余命42歳、60歳以上も4%にすぎません。

日本人の平均寿命
次に厚労省の簡易生命表で、日本人の平均余命を年齢・性別に見てみます。平成20年の資料ですが、平均寿命は男性79.29歳、女性86.05歳になっています。団塊の世代といわれる昭和22・23年生まれは、平成20年現在で60・61歳ですから、平均余命は、20~28年になります。
ぐっと身近な話になりますが、広島市の状況を見て下さい。2005年の資料ですが、家族以外の何らかの助けを必要とするであろうと思われる、高齢者を含む、または高齢者のみの世帯の割合は3割を超えています。また、高齢化率も年々上昇し、2010年では19.4%になっています。さらに、これから高齢者の仲間入りをしていく年代の方々もたくさん控えておられます。
ご存知だとは思いますが、日本人の三大死因は、がん・心臓病・脳卒中です。医学の進歩などにより、この三大死因が克服されれば、男性で8.04歳・女性で6.99歳平均寿命が延びるとも言われています。現実に、先端的医療の普及などにより、がんは不治の病ではなくなってきています。つまり、この先まだまだ高齢化がすすんでいきますし、最大のマーケットになり得るという事だと思います。

介護サービスについて
では、具体的にどの様な施設やサービスが存在するのかを見て下さい。公的支援として代表的なものになると、介護保険があります。介護保険で利用できるサービスは多岐にわたっていますが、施設としては、特定施設入居者生活介護の指定を受けているいわゆる特定施設・・一言でいえば、「職員が介護サービスを提供するもの」と、「外部事業者に介護サービスを依頼して居宅サービスを受けるもの」があります。訪問サービス・通所サービス・短期間の入所は、特定施設に併設されている場合が多いのが現状です。他にも居宅サービスとして、改修費の支給や福祉用具の貸与など色々とありますが、不動産に絡む、所謂箱モノの施設について実際にどの様なサービスに参入しやすいか考えてみたいと思います。

・療養型病床は医療施設ですし、平成23年春を目途に廃止される事になっています。
・介護老人保健施設・老健といわれるものは、県の許可によりますが、やはり医療施設になります。
・軽費老人ホームは、15年以上ほとんど新規開設は無く、減少傾向です。これは、採算性が低い為もあると考えられます。
・養護老人ホームは、生活支援ハウスと同様に公的サービスの一環です。
・ 有料老人ホームは、多種多様あります。

超高級介護施設
 超高級なもので成城にあるものは、入居一時金が8750万~3億7000万に介護一時金として900万、生活サービス一時金として700万、最も多い居室は入居一時金が1億1200万という事は、入るだけで1億2800万かかります。月々の管理費は198,450円、食費は朝食のみで31,500円で後は実費、それに光熱費等がかかります。当然、これだけの費用がかかるという事は、立地も含めてホテル以上の設備を備えたものになっているのだろうと思います。一体どんな方が入っておられるのかだけでも知りたい様な施設です。

広島の一般的な介護施設
 広島で一般的な施設となると、西風新都にあるメリィハウスは、保証金が45万で管理費や食費などを合わせて月々20万位で入居出来ます。ディアレスト可部は、保証金が30万で月々の費用は123000円になっています。利用者の大半の経済状況等を鑑みると、安価な方が需要が見込まれると思われます。現に、ディアレストなどは、入居待ちの状態の様です。素人がいきなり経営するのは難しいと思われますが、業者によっては、勿論立地などの条件が合えばですが、30年一括借り上げ出来る物件を探している所もありますので、所有している土地の有効利用として、分譲・または賃貸マンションの代わりに建築するという事も考えられます。しかし、土地を新たに購入して建設するとなると、やはり地代のより安い市街地から離れた場所に建設せざるを得なくなりますし、そうなると、需要の問題が生じるかもしれません。

高齢者専用住宅の種類
・高齢者専用賃貸住宅、略して高専賃と言われますが、国からの厳しい基準を満たした順に高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃) 高齢者専用賃貸住宅(高専賃) 高齢者円滑入居住宅(高円賃)と分けられます。民間活力の活用と既存ストックの有効活用を図りつつ、高齢者に良好な居住環境を備えた住宅の提供を促進する事が目的です。家賃の不払いや病気・事故等についての貸主の不安感から、民間の賃貸住宅業界ではしばしば高齢者の入居が拒否されてしまうというケースがありますが、反対に高齢である事を理由に入居を拒否する事の無い賃貸住宅として一定の基準を満たして登録すれば、家賃の補助制度なども受けられます。高齢化が進み、既存の施設などでは間に合わなくなっているので、様々な補助制度や軽減措置により、高専賃などの供給促進が行われているという事です。
 例えば、新築・取得した場合は所得税・法人税・固定資産税が軽減されますし、整備費用に関しても補助金が受けられます。さらに一般住宅としてではなく、規定に従って居間・台所・浴室などを共用として整備して常駐のヘルパーなどを配置すると、老人ホームの届け出は不要なのに、特定施設の対象ともなり得ます。

グループホーム
・認知症対応型共同生活介護というのは、大変わかりにくい名前ですが、最近増えているグループホームの事です。認知症の診断を受けた要介護者が、衣食住の費用を全額自己負担して、施設内で介護や世話・機能訓練を受けながら共同生活を営む施設になります。平成18年度から創設された「地域密着型サービス」に位置付けられており、事業所のある市町村で指定申請手続きをします。「地域密着型サービス」というのは、高齢者が住み慣れた地域での生活を継続するために、身近な生活圏ごとにサービスの拠点を作って支援するのが目的で、だいたい中学校区ごとに日常生活圏域を設けてあります。その為、指定基準を全て満たしていても、各市町村の介護保険計画による計画数を超えていたりすると指定申請が拒否される場合もあります。広島市では今年の2月に18事業者の募集がありましたが、16業者の応募があり、その内8業者が選定されました。
施設の設備基準として1事業所あたりユニットが2以下である事、1ユニットの定員は5人以上9人以下であり、4畳半以上の居室とユニット毎に居間・食堂・台所・浴室・事務室・面談室などがあることとなっていますので、あまり大きな建物は要りません。また、衣食住にかかる生活費は規制を受けないので自由に設定出来ますが、12万~15万位の施設が多い様です。

特別養護老人ホーム
・特別養護老人ホーム、特養は一番知られている施設ではないかと思います。
1施設あたり30人から100人位の要介護者が入所して、入浴・排泄・食事等の日常生活上の世話、機能訓練・健康管理・療養上の世話を受ける施設です。待機者が500人を超える施設もある位なので、経営に困るという事は無いと思われます。社会福祉法人にしか認可されませんが、広島市からの補助金もありますし、福祉医療機構という独立行政法人から低い金利で融資も受けられます。但し、広島市が「高齢者施策推進プラン」に基づいてベッド数を限定して募集しますし、補助金が絡むので大変厳しい審査もあり、なかなか難しいかもしれません。実際に、昨年から2度応募に関わりましたが、1度目は1次審査で、2度目は2次審査で落選してしまいました。提出書類だけでも47項目位あり、設計会社や行政書士の手も借りて、土地の売買契約や地元説明会なども行い、かなりの期間を費やして応募しましたが、無理でした。基本的に、土地については寄付などによって無償になっているか、安価な地代である事が条件なので、土地の提供が出来る方には向いていると思います。社会福祉法人の経営なので、利益が出ても他に転用したり、莫大な報酬を得る事は出来ませんが、リネンや食事などの付帯するサービスについては外注する事によって別会社で利益を上げる事も出来ます。

以上が介護施設の主なものになりますが、実際には複合施設として色々な施設を組み合わせて経営されているものが多くあります。皆さんご存知かもしれませんが、中区の萬象園は、1階がデイサービスとレストラン 2階がグループホーム 3、4階が有料老人ホーム 5~9階はシルバーマンション 10階に展望浴場・ラウンジ・ジムなどを設けています。高齢になっても自立している間はマンションで暮らし、要介護者になれば有料老人ホームに入り、認知症と診断されたらグループホームで生活するという、生活圏域を変えないで一生過ごせる、ある意味理想に近い施設かもしれません。

 では、具体的に需要があるのはどの地域なのか、広島市の区別の高齢者人口と施設の数を比較してみます。新たにこの様な施設を開設するとしたら、高齢者人口と施設の数の割合から考えて、安佐南区か中区あたりが適しているのではないかと思います。中区は、比較的地代が高いので割に合わないかと思われますが、風営法が変わり、来年の2月から所謂ラブホテルに対する規制が厳しくなるので、廃業するホテルも出てくるかもしれません。その様なホテルを買って、高専賃に改装するという方法もあります。また、老朽化などで空室の目立つ賃貸物件も多くあり、売却される可能性もあるので、費用をかけて新築する必要は無いかもしれません。とりあえず改装して高専賃の届け出をして、更に広島市の募集状況を鑑みて、特定施設の指定を受ける事も出来ると思います。

 勿論、福祉に関わる事ですし、商売上の損得だけを考えて出来る事業ではありませんが、倫理観を貫ける素晴らしい仕事の一つではないかと思います。

Posted by 事務局 at 12時30分

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