- 本日のプログラム
- 新会員卓話
「骨髄移植から細胞療法へ」 - 卓話者
- 土肥博雄君
- 会長時間
- ・先週は珍しい事に来客がゼロでした。
・いよいよ釣りに良い季節、商工センターの突堤などに多くの釣り人を見ます。
・今年度も終盤、委員会活動でまだ職業奉仕など残っているものもあります。宜しくお願い致します。
・久野瀬さんが入院されているので、見舞いに行く予定。 - 幹事報告
- ・BOX配布物→会報2月号・理事役員会議事録・次年度理事役員会議事録・次年度会長方針・次年度委員会所属表
・ロータリーレート変更のお知らせ
5/1より1$108円に変更されます(現行102円)
・広島東南・広島城南・広島中央3RC懇親ソフトボール大会のご案内をBOX配布しています。出欠回答用紙を回覧しますのでご記入ください。
・健康診断(人間ドック)のご案内を、メール及びFAXにて発信しておりますので、ご確認ください。
・5月2日?はロータリークラブ定款第5条第1節?による指定休会日です。
・バナーの紹介 広島空港RC:今回ガバナー杯野球大会初参加記念?東京杉並RC交換
・会報2月号訂正箇所のお知らせ - 委員会報告等
- ・社会奉仕委員会=愛のコイン箱
・次年度副会長=本日例会終了後1Fコルベーユにて次年度A部門インフォーマルミーティング 開催
・親睦活動委員会=懇親ソフトボール大会出席のお誘い
・出席委員会:出席報告
卓話時間
「骨髄移植から細胞療法へ」
土肥博雄君
1) 骨髄移植の歴史
1959年フランスのmatheらはユーゴスラビアの原子力発電所の事故による患者に骨髄移植を行ったが全て不成功に終わった。事実1970年までに報告された骨髄移植は全て失敗であった。1958年のDaussetの人白血球抗体(HLA)の発見とそれに続くHLA検査の発展と免疫抑制剤の開発が相俟って1975年以後成績が向上し1980年代から日本でも盛んに行われるようになった。広島で最初の骨髄移植を行ったのは我々のグループで1983年である。
2) 骨髄移植とは
白血病患者では全身に白血病細胞が満ち満ちている。それを大量の化学療法と大量の放射線療法で根絶やしにする。その後骨髄提供者骨髄を輸注して骨髄が生着するのを待つのである。しかしHLAの型が一致する必要がある。前処置として大量の化学療法行うため、移植対象年齢は60歳未満で、重症感染症などの患者には無理である等の制限がある。ただ化学療法による寛解よりも再発率が低い。
3) 骨髄移植の疑問点
白血病細胞は大量の化学療法と放射線療法で根絶やしに出来るのか?
この点については残念ながら答えはNoである。化学療法を強くすればするほど再発率は下がると見込んで強い前処置が開発されたが、再発率の低下には繋がっていない。
根絶やしに出来ていないとすれば何故骨髄移植では再発率が低いのか?
移植片対宿主病(GVHD)が軽度出現した症例の方が全く起こらなかった症例に比べて再発率が低いのは何時どの様な統計をとっても事実である。
移植された細胞が何らかの機序で再発防止に、つまり白血病細胞を殺すことに働いているか可能性がある。
4) 私たちの経験
昭和61年に大量の消化管出血で大量輸血を受けた症例が手術後、白血球が無くなり死亡した。剖検するに骨髄は低形成で全身のリンパ装置の萎縮が高度であった。これは後に考えると輸血後GVHDと呼ばれる病態で輸血した血液中に含まれる白血球が患者の体で増加し、宿主である患者さんのリンパ球や骨髄細胞を攻撃して死滅させたのである。
細胞の殺細胞効果はそうz出来な想像出来ないほど強大である。
5) Slavin教授の経験
彼は9歳の男児の急性リンパ性白血病再発例に対しHLA一致の姉から骨髄移植をした。移植後GVHDもなく経過良好であったが、一ヵ月後に再発した。この症例にドナーだった姉のリンパ球を輸注した。その結果完全寛解となり20年経た現在でも元気でイスラエル軍の兵隊として働いている。
この症例では後から追加して輸注したリンパ球が援軍の役目を果たし、残存白血病細胞を根絶やしにしたのである。
6) ドナーリンパ球輸注(DLI)からの教訓
DLIは慢性骨髄性白血病の早期再発や移植後出現するEBウイルス関連B細胞リンパ腫に対しドナーのリンパ球を輸注するものである。これが信じられない効果をもたらす。
7) ミニ移植
通常の移植では前処置がかなり激しく、高齢者やリスクのある患者には施行出来ない状況であった。そこで移植前処置をなるべく軽度にし、移植前処置による障害を最低限とし、後からDLIを行い残存白血病細胞を殲滅させようという巧妙な手段が開発された。これがミニ移植と呼ばれるものである。尤もこれで全て旨くゆくわけではないが、化学療法に頼っていた骨髄移植が移植細胞による残存白血病細胞の駆逐という新しい面を迎えたといえる。
8) 新しいコンセプトの治療薬
華々しい20世紀に数え切れないほど多くの薬が開発されたが本当に効くのは心不全に対するジギタリス、疼痛に対するモルヒネそしてマラリアに対するキニーネといわれる。しかし世紀の変わるころから全く新しいコンセプトで治療薬が開発されてきている。まだ開発段階の薬だがWT-1ペプチドを用いた免疫療法も注目を浴びている。
21世紀は今の我々が考え付かない新しい概念の治療が開発されてくるだろう。