- 本日のプログラム
- 会員リレー卓話 No.16
「予防法学」
「今、なぜ腎臓病か? - 卓話者
- ・緒方俊平君
・頼岡徳在君 - 担当
- プログラム
- ゲスト
- 米山奨学生:黄(ファン ユウチン)さん
- 会長時間
- このところ、気温三十度の暑い日があるかと思えば、昨日のように大雨が降ったりで、季節感がなくなってしまいそうですが、実は今が桑の実の季節であることをご存知でしょうか。
私は、三年前、西安、敦煌、トルファン、ウルムチといわゆる「シルクロード」を旅しました。シルクロードですから。当然、シルク(絹)とそれを作る蚕の餌となる桑を想像するはずでしたが、それを忘れていました。旅の途中、トルファンに行ったとき、ウイグルの子供が籠に入れた桑の実を買ってくれといって寄ってきたとき、わずかな水の流れの傍にある桑の樹に気づき、シルクロードなのだ、と思い出した次第です。
その旅から帰って話をしていたら、島根県の桜江町に桑の実を摘ませるところがあると聞いて、そこへ六月の初めに桑の実を摘みに行ったことがあります。
桑の実といえば、「赤とんぼ」の歌に、桑の実が出てきますが、この歌は、作詞の三木露風が、幼いころ、母親は放蕩三昧の父親を嫌って家を出てしまい、露風を育てられない父親は、彼を祖父に預けた。そこに雇われていた「ねえや」との思い出がこの詩のモチーフになっていると言われています。 - 幹事報告
- ◎ 100万$食事(幹事告知)
◎ BOX配布物
(1)6月プログラム
(2)次年度理事役員会議事録
(3)会報4月号 - 委員会報告等
- ◎出席 : 出席報告
◎ロータリー財団委員会 : 愛のコイン箱(ポリオ寄付指定)
◎職業奉仕 : 健康診断のご案内について
◎クラブ会報 : 4月号会報訂正箇所のお知らせとお詫び
卓話時間
会員リレー卓話No.16
緒方俊平君
頼岡徳在君
「予防法学について」 緒方俊平
1.弁護士の職域について
(1) 裁判実務を行う(旧来からの職域)
(2) 法的コンサルを行う(事前の予防という職域)
2.法的コンサルについて
(1) 様々な職業分野には、様々な法的規制がかかっています。届出制や許可制は、その典型です。さらには、個人情報保護法等の規制もこれに加わってきます。
何かを為そうとした時には、常に官からの法的規制が存在し、これをクリヤーしなければなりません。異業種参入が困難な理由の一つがこれであり、いわゆる「ノウハウ」の一部となっています。
これを対官との関係の法的予防と呼べるかもしれません。
(2) 民間企業との関係で事前に法的判断が求められるのは、いわゆる「契約書」についてです。特に、これまで慢然として10年以上、以前の契約書を定型的に使用している企業は、それだけで経済社会からの信頼を失います。
我国の場合、米国のような契約社会とはなっておりませんので、どこかで「まあまあ」「なあなあ」のネゴシエーションにより、企業間の契約は処理されてゆく側面がありますが、最近はそのような期待は裏切られ、紛争になった場合には、敗訴するでしょう。
私の事務所でも、契約書は顧問契約先の企業のためにかなり気を配って注意を換起し、チェックもしております。これこそ大きな予防法学の実務です。
(3) 市民生活上の予防法学
(イ) 個人として社会生活をするうえでも、我々は、契約社会に生きているので、契約意識は大切です。
さて、特にここでは、老人大国となった我国の特殊な問題についてとりあげてみます。
その代表が、「成年後見制度」と「遺言」です。
長寿社会は喜ばしいことですが、財産を所有して、認知症が発症した場合には、多くの悲惨な出来事が発生しています。
法律はこの状況に対処すべく、法定後見制度を設けております。「後見」「保佐」「補助」という三種類の後見内容があります。別途資料にて、それぞれの具体例を説明致します。
さらに、「任意後見制度」についても充分な理解をする必要があります。これこそ、あらかじめ、将来、自分の判断能力が不充分になった時のために、公正証書で任意後見契約を締結する予防法学の実務です。
(ロ) 次に遺言についても、少し説明をしておきたいと思います。
遺言を書く時の注意点は、要式が厳格であるため、せっかく書いた遺言も無効とされる場合がよくあります。
遺言をする場合には、様々な形式がありますので、専門家に相談することが良いでしょう。
銀行等で、遺言信託という方法もありますが、自分の全財産の情報が銀行に知られて、営業の材料にされるのを恐れる方は、単純な遺言書を公正証書で作成するのが一番良いでしょう。
その際、「遺留分」という権利についての知識が無いと、後日、相続人間に、無用の紛争を惹起することともなります。
「今、なぜ腎臓病か」 頼岡徳在君
腎臓は、左右の腰背部に1つずつあり、その大きさは握りこぶし程度です。腎臓でつくられた尿は、尿管・膀胱・尿道を経て排泄されます。腎臓は、老廃物(尿素窒素・クレアチニンなど)の排泄、水分の調節、電解質(ナトリウム・カリウムなど)の調節、血圧の調節などの働きをしております。従って腎臓の働きが低下すれば、血液中に老廃物が蓄積し、むくみが出たり、血圧が上昇してきます。さらには、赤血球を造る働きがあるエリスロポエチンの産生不足がおこり、貧血となります。腎臓の働きが高度に障害されると、尿毒症となり、透析療法、腎移植を行わなければ死に至ります。現在わが国では、尿毒症のために慢性透析療法を行っている患者さんが約30万人おられ、いまだ年々増加しています。その原因疾患としては、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、高血圧による腎障害(腎硬化症)が代表です。透析療法が必要となれば生活の質は低下し、国としても膨大な医療費が必要となります。そのため、尿毒症の新規発症を防ぐことが必要となります。そこで、慢性腎臓病(Chronic kidney Disease:CKD)という概念を提唱し、腎臓専門医でなくても診断、治療が可能となるよう世界的に運動がなされています。CKDの定義は、蛋白尿などの尿異常が3ヵ月以上続くか、腎臓の働き(糸球体濾過量:GFR)が60ml/min/1.73m2(60%)未満に低下した状態が3ヵ月以上続くこととしています。現在わが国では、CKDの患者数は1350万人と推定され、次の国民病と言われています。CKD はその程度によりステージ1~5に分類されていますが、重要なのはいまだCKDは発症していないが管理が悪いと必ずCKDを発症するステージ0の疾患です。糖尿病、高血圧、肥満、メタボリックシンドローム、高尿酸血症、脂質異常が該当します。さらに、CKDは心血管障害の発症・進行のリスクになることも知られています。以上より、CKDに対する認識は大変重要であります。
それでは、いかにすればCKDの発症、進行が防げるのでしょうか。それには生活習慣の是正が必要となります。食塩の摂取制限(6g/日未満)、肥満の是正、禁煙、蛋白質の摂取制限などです。さらに皆さんが自分でできることは、血圧の管理です。血圧は130/80mmHg未満に管理するべきです。また、悪玉コレステロールを基準値以下(100mg/dl未満)に保つことも必要です。CKDは、早期発見、早期治療をすれば怖い病気ではありません。CKDの早期発見には定期的な健診を受け、尿検査、血清クレアチニンの測定が必要です。会員の皆さんには、生活習慣を是正し、定期健診を受けられることをお勧めして、稿をとじさせて頂きます。